ドラえもん映画・大長編シリージ第3作目「のび太の大魔境」で、バウワンコ王国の生活レベルが向上しなかった理由を考察していきます。
大長編ドラえもん のび太の大魔境
大長編ドラえもん3作目「のび太の大魔境」は、1982年に映画公開されました。
この作品は2014年にも新声優さん方でリメイクしています。
*リメイク版「のび太の大魔境~ペコと5人の探検隊~」の感想記事は、こちらから。
【映画ドラえもん感想】「新・のび太の大魔境 ~ペコと5人の探検隊~」の感想! 原作・旧作映画とも比較してみた
ジャイアンとスネ夫に脅されて頼まれて、アフリカ大陸に冒険できる場所がないか、ドラえもんと一緒に探すことになったのび太。
ペコと名付けた迷い犬?を堂々と飼えるようになり喜ぶ中、ドラえもんひみつ道具でアフリカ大陸に未開拓の土地があると判明し、ペコと共にドラえもん一行が未開拓のアフリカに冒険に行くお話です。
*「のび太の大魔境」については、こちらで存分に語り尽くしています。
【大長編・映画ドラえもん感想】ドラファンが「のび太の大魔境」を語り尽くす!*「のび太の大魔境」の名言ランキングです。
【大長編・映画ドラえもん】「のび太の大魔境」名言ランキング!
*以下、映画・大長編のネタバレがありますのでご注意ください*
バウワンコ王国とは
バウワンコ王国は、「のび太の大魔境」に登場するペコの祖国で、犬を祖先に持つ知的生物が居住しています。
ペコも一見すると普通の犬ですが、
(藤子・F・不二雄、小学館「大長編ドラえもんVOL.3 のび太の大魔境」114ページより引用)
実はバウワンコ王国の王子様でした。
先代バウワンコ108世の子で、行く行くは109代バウワンコ王に即位する由緒正しき王族だったのです。
リメイク版では、責任感が強く、国民を心の底から憂う優しき王子の姿が殊更に描かれました。
(藤子・F・不二雄、小学館「大長編ドラえもんVOL.3 のび太の大魔境」188ページより引用)
原作では王らしい格好をしている姿はたった3コマだけですが(むしろ全編ほぼ裸)、映画やリメイク版では服を着た姿を多めに見ることができます。
では、
ペコの祖国であるバウワンコ王国とは、どのような国だったのでしょうか。
バウワンコ王国の民族
ペコの祖国バウワンコ王国は、コンゴ盆地の奥地にあります。
(藤子・F・不二雄、小学館「大長編ドラえもんVOL.3 のび太の大魔境」35ページより引用)
原作では当時の国名のままで、現在はコンゴ民主共和国になります。
遥か昔に地殻変動が起きたことで外界と遮断され、取り残された生物が独自の進化を遂げました。
我々猿が進化した人間ではなく、犬(狼?)が進化した犬人間?が主に居住しています。
(藤子・F・不二雄、小学館「大長編ドラえもんVOL.3 のび太の大魔境」145ページより引用)
人間同様、彼らも様々な犬種がいるようです。
ペコ曰く、犬人間の方が人間より知能が高いらしく、
(藤子・F・不二雄、小学館「大長編ドラえもんVOL.3 のび太の大魔境」135ページより引用)
現に、彼らは5000年前に科学兵器を開発し、人間世界を見たことがなかったペコが予想外に人間世界に飛び込んだ後も、
異質な自分を存在を目くらましするために四本足で祖先の「犬」のフリをするという機転を利かせ、更に人間社会の仕組みも粗方学び、数ある言語の中で日本語をほぼ完璧に習得
して、異常事態でも冷静に、柔軟に対応しています。
ペコが祖国を追いやられ、日本でのび太に出会うまで長くても数ヶ月から1年ほどであったでしょうから(ペコが祖国を離れたのが年単位と仮定すると、さすがにダブランダーが人間社会に襲撃し始める)、そんな期間で人間社会の言語のひとつも習得できたのだから、この事実だけでもペコの有能さを物語っています。
(藤子・F・不二雄、小学館「大長編ドラえもんVOL.3 のび太の大魔境」34ページより引用)
二本足で歩ける骨格に進化したはずなのに、人間社会では普通の犬と変わらない四足歩行も可能です。
(藤子・F・不二雄、小学館「大長編ドラえもんVOL.3 のび太の大魔境」139ページより引用)
犬が進化した生物だからなのか、鼻も利くようです。
リメイク版では、サベール隊長が
「妙な匂いがしたのでな」
とチッポの馬車を検問にかけるシーンもあります。
もちろん、本来の犬ほどの嗅覚や聴覚は持っていないと思われます。
(藤子・F・不二雄、小学館「大長編ドラえもんVOL.3 のび太の大魔境」145ページより引用)
言語がいくつかあるのかは不明ですが、少なくとも都市部では、アルファベットを上下左右、逆さまにしたような文字を使っています。
また、ペコの父がバウワンコ108世で、息子のペコがダブランダーに暗殺されかけたことを鑑みると、おそらくペコが王の後継者だから、暗殺の対象になったのでしょう。
つまり、君主制に近い国家だったと推測できます。
バウワンコ王国の軍事力
現在のバウワンコ王国の軍事力は、決して最新鋭とは言えません。
(藤子・F・不二雄、小学館「大長編ドラえもんVOL.3 のび太の大魔境」124ページより引用)
警察の役目も果たしたであろう一般兵士の基本武器は、槍と剣。
ダブランダーとコス博士が国民に製作させたバウワンコ王国のとっておきの兵器は、
(藤子・F・不二雄、小学館「大長編ドラえもんVOL.3 のび太の大魔境」126ページより引用)
火を吐く車と、空飛ぶ船です。
現代社会では少々お粗末に見える兵器ですが、5000年前既に開発されたものと聞けば、バウワンコ王国の科学技術力がいかに高かったのか、よくわかります。
(5000年前は、日本はまだ縄文時代、世界ではメソポタミア文明が発展していた頃)
(藤子・F・不二雄、小学館「大長編ドラえもんVOL.3 のび太の大魔境」114ページより引用)
ホログラムとはちょっと違う仕組みらしいですが、空中に高圧電気も発生させることができる、王族のペンダントもあります。
王国にある守り神の巨神像も同時期に建立されたもので、これら兵器が開発された後、
バウワンコ一世が一切の研究を禁じたため、バウワンコ王国の軍事力は発展してきませんでした。
リメイク版では、「科学力は衰退したものの、おかげで王国の平和が保たれた」と追加の説明がありました。
(藤子・F・不二雄、小学館「大長編ドラえもんVOL.3 のび太の大魔境」130ページより引用)
軍の隊長の移動すらも、ツチブタが主です。
科学技術が衰退したため、人間社会で言う自動車等が開発されなかったのでしょう。
火を吐く車や空飛ぶ船を動かす燃料は、コス博士が古代兵器の記録から再現したと考えられます。
バウワンコ王国の文化
兵器開発の研究、つまり科学技術の開発が5000年前から禁止されたバウワンコ王国では、
一般人の生活レベルもさほど発展しなかった
ようです。
原作や映画版では1980年代前半当時の人間文化よりも進んでいるようには見えず、まるでドラクエ世界のような印象を受けます。
(藤子・F・不二雄、小学館「大長編ドラえもんVOL.3 のび太の大魔境」119ページより引用)
祖国に無事戻ることができて、両手を上げて地味に喜んでいるペコが可愛いですね。
バウワンコ王国は、人間社会の先進国とは違い、草原が広がる自然豊かな国であることがわかります。
リメイク版では大きな水車が王国のシンボルとなっており、「収穫した農作物を加工したり、王宮に水を運んだりしている」とペコの説明が加わりました。
おそらく電気がないのでしょう、
(藤子・F・不二雄、小学館「大長編ドラえもんVOL.3 のび太の大魔境」142ページより引用)
市街地にも街灯はなく、兵士たちの松明だけが闇を照らしています。
街灯がないので、もちろん屋内の照明も電気ではなく松明でした。
リメイク版を見ると、昔ながらの農業や畜産業を営んでいる家庭があることもわかりました。
バウワンコ王国はなぜ発展しなかったのか
5000年前には、既に高い技術力を持っていたバウワンコ王国。
しかし、兵器研究を禁じられ科学力が衰退したとはいえ、5000年間国民の生活レベルも向上しなかったのは不思議です。
国民は電気すらもないような文化レベルなのに、
ダブランダーの命令で5000年前の超科学技術を再現できたのだから、現在のバウワンコ王国の科学力が完全に衰退したとは思えない
からです。
コス博士が優秀なだけで、国民には本来持っていた科学力を明かしていない。
ということも原因のひとつでしょうが、5000年もあったのに、国民の間で不便な生活を向上させようと科学者のような存在すらも出なかったのか…。
では、
なぜ、バウワンコ王国では人間社会のように国民の生活レベルが向上しなかったのでしょうか。
国王の統率が完璧だった
(藤子・F・不二雄、小学館「大長編ドラえもんVOL.3 のび太の大魔境」133ページより引用)
バウワンコ王国の建国者であるバウワンコ一世は、兵器の開発を禁止する代わりに守り神として巨神像を建造して、以来国は平和に栄えてきました。
おそらく君主制だと思われるバウワンコ王国、ペコや先代のバウワンコ108世含め、歴代の王の政治力、統率力は完璧だったのではないでしょうか。
国を率いる者として、国民を想い、責任感を持って国を運営する歴代の王の姿は、国民からの信頼を得て絶大な人気を誇り、国民は国に対して不満を持つことが少なかったのです。
もちろん、賢明なバウワンコ一世の言葉である、
「兵器の限りない発達は世界の滅亡を招く」
という考えに、国民も賛同した結果でしょう。
巨神像を神聖化して奉り、王は国民からの信頼を得て、王族たちも科学技術に頼らない生活を堅持したことで、国全体の生活レベルが向上しなくても、国民は何の不満も持たなかったのです。
食糧に困らなかった
次に考えられるのが、食糧事情です。
バウワンコ王国の土地は肥沃で、国民は食糧に困らなかった
ことも、大きな原因のひとつでしょう。
(藤子・F・不二雄、小学館「大長編ドラえもんVOL.3 のび太の大魔境」130ページより引用)
悪大臣ダブランダーの支配下になっても、住民たちは兵士は恐れても飢えに苦しんでいる様子はありません。
子どものチッポは親が連れて行かれたために腹ペコになっていましたが、このような特別な事情がなければ、バウワンコ王国国民は食糧がなく飢えるという悲惨な状態にはならなかったと考えられます。
食糧に困らなければ、国民が国に不満を募らせることも少なくなり、内乱も起きにくくなります。
つまり、
争いを起こす理由もなく、国に不満も抱かず、現状に満足していた国民は、生活レベルを上げる発想がなかった
のです。
敵国からの侵略の心配が皆無
上記の理由に加え、バウワンコ王国は外界から隔絶された国のため、
敵国からの侵略の心配がありませんでした。
食糧に困らない=土地が肥沃で農産物に困らない
という意味にも繋がり、古来であればこのような土地は真っ先に諸外国に狙われやすいはずですが、外界から閉ざされたバウワンコ王国の場所が幸いしました。
戦がなければ、敵を倒すための武器を作ったり、科学兵器を開発する必要もなく、
現状のまま、バウワンコ王国国民は平和な時代を5000年も築けたのでしょう。
ここでひとつ謎なのが、
(藤子・F・不二雄、小学館「大長編ドラえもんVOL.3 のび太の大魔境」80ページより引用)
アフリカの原住民が崇めていた、神の存在です。
彼らはドラえもんたちをワニの襲撃から助けてくれて、巨神像に似た像を神として崇拝していました。
これは偶像崇拝に当たるものかと思われますが、
彼らはなぜ、バウワンコ王国にある巨神像に似たものを神として崇拝するようになったのか?
あそこまで本物の巨神像に似ているとなると、実際に原住民の誰かが目撃したのでは?と思います。
単純に、過去に原住民がバウワンコ王国に迷い込んでしまったからなのか、それとも、これまでの歴代の王の誰かが人間界にお忍びで出た時に、原住民の前で例のペンダントの巨神像を出現させたからなのか…。
ひみつ道具や近代の道具なしに、あの地底の川を人間一人で上るのは厳しいので、個人的には後者ではないかな、と思っています。
ペコは王国が始まって以来、彼以外に国を出た者はいないと言っていますが、王族がお忍びで国を出ていれば記録には残りません。
(藤子・F・不二雄、小学館「大長編ドラえもんVOL.3 のび太の大魔境」116ページより引用)
「この目でみるまで」、実はこの意味が、
ペコは「人間」という存在を、知識だけで知っていた
というニュアンスだったとしたら…。
お忍びで出た過去の王族が、人間の存在を教本のような形で残しておいたということも充分に有り得ます。
原住民が言っていた「三つの命」の話も、ペンダントの巨神像を通して伝えていたとすれば、科学を知らない原住民はそれを神の言葉として代々伝承したでしょう。
5000年も前に、人間世界では有り得ない科学兵器を開発していたくらいの種族ですから、バウワンコ一世の言葉を守っても、外の世界に興味を向けた王族がいたとしても、不思議ではありません。
むしろ、5000年間ダブランダーのような野心を持つ犬人間が現れなかったことの方が、奇跡に近かったのかも…?
まとめ
ドラえもん映画・大長編シリージ第3作目「のび太の大魔境」で、バウワンコ王国の生活レベルが向上しなかった理由について考察してみました。
5000年もの間、平和な時代を築けたバウワンコ王国は、科学技術が衰退したとはいえ、もう少し国民の生活レベルが上がっていてもおかしくないのですが、その要因として、
- 歴代の国王の政治力・統率力が完璧だった
- 国が食糧に困らない肥沃な土地だった
- 敵からの侵略の心配がなかった
この3点が考えられます。
国の建国者バウワンコ一世の言葉を国民も支持し、食糧豊富で日々の生活にも困らず、敵からの侵略の心配がなかったため、国民たちも現状に満足して今以上の贅沢を求めなかったのです。
平和を求めて長い間実現できていた王族はじめ国民の心が、何よりも素晴らしいですね。
*「のび太の恐竜」タイムふろしきの考察記事は、こちらから。
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リメイク版は、旧作よりもペコの心情を詳細に表現してくれていて、いちいち泣けます。
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ジャイアンのシーンは、旧作映画も秀逸です。
原作大長編も良きです。
当時のドラえもん映画好きな方には、DVD BOXは本気でオススメ。
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