【金田一少年の事件簿】「飛騨からくり屋敷殺人事件」仙田猿彦を地味に深掘りしてみたら…

 

金田一少年の事件簿の「飛騨からくり屋敷殺人事件」で、巽家使用人の仙田猿彦について考察します。

 

*以下、最初から最後まで「飛騨からくり屋敷殺人事件」のネタバレ(犯人等)が全開なので、未読の方は要注意*

 

仙田猿彦とは

(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版11巻10ページ)

仙田猿彦は、奥飛騨の名家、巽家の使用人です。

「飛騨からくり屋敷殺人事件」の犯人、巽紫乃の共犯者であり、紫乃とは若い頃に男女の仲になったこともある、巽家長男の龍之介の実父です。

では、なんだか地味な印象で終わりがちな猿彦を(私だけ?)、金田一少年シリーズの要である共犯者=犯人ということで、地味に深掘りしてみます。

★遺伝子上では猿彦の実子、巽龍之介と義兄弟の巽征丸の出生を考察した記事は、こちらから。

【金田一少年の事件簿】「飛騨からくり屋敷殺人事件」巽龍之介と巽征丸、義兄弟の出生の秘密に迫る! 征丸は本当に双子だったのか?

他人からの人物評

猿彦の人物評は、同じ巽家使用人である桐山環ちゃんから聞くことができます。

(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版11巻188ページ)

親子ほど年の離れた同僚からは、ズル賢いとの評価を頂いております。
(アニメ版では環は登場しないので、この台詞は冬木医師が代弁しています)

真犯人の「操り人形」にはなりそうにない、と断言されてしまうほど、「お人好し」とはかけ離れた人物であったということでしょう。

(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版12巻62ページ)

猿彦を操った真犯人の紫乃は、「とんでもない」クズとまで言い切っています。

若い頃、ほんのひと時の間に男女の仲になったとはいえ、子どもができた途端に逃げるようなクソ男であり、以来連絡なんて取り合ったこともないのに、紫乃が名家巽家の後妻になったと噂で聞いた途端に金を強請りに来た猿彦。

更に、龍之介が実子だとわかれば紫乃による征丸サツ害計画にノリノリで乗ってくるあたり、紫乃の言うようにとんでもないクズだったことは間違いないようです。

最期は、紫乃が銃による心中を持ち掛けたところ、猿彦なら絶対に紫乃だけに罪をなすりつけるだろうと完璧に猿彦の思考を読み、鉛の詰まった銃を暴発させて自分の手を汚すことなく猿彦を消す…。

(船津紳平/さとうふみや/金成陽三郎/天樹征丸、講談社「犯人たちの事件簿」5巻74ページ)

猿彦の信頼の置けるクズっぷりには、紫乃も容易に計画を立てられたことでしょうね。

ともかく、ズル賢く、総じてクズな性格だったというのが、「飛騨からくり屋敷殺人事件」内における猿彦の人物評でした。

★「飛騨からくり屋敷殺人事件」の犯人である巽紫乃=首狩り武者の誤算を考察した記事は、こちらから。

【金田一少年の事件簿】「飛騨からくり屋敷殺人事件」問題は〇〇だけではなかった! 犯人、首狩り武者の最大の誤算とは?

猿彦の経歴

そんなクズい猿彦の経歴は、剣持警部による捜査によって少し判明しています。

(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版11巻143ページ)

字が小さくて判別しにくいですが、確定できる情報としては、

 

  • 栃木県日光市出身
  • 仙田家の次男
  • 〇〇県立猿山?高校出身
  • 高校卒業後は職を転々とする
  • (10年前まで)曲芸団で軽業師をしていた
  • 2年前に巽家使用人となる

 

このくらいでしょうか。

紫乃は、猿彦が綱渡り中に転落したことをきっかけに軽業師を辞めたことを知らなかったので、猿彦が高校卒業後の職を転々としていた時期から軽業師として働いていた頃に、紫乃と出会って男女の仲になったと推測ができます。

軽業師を辞めた10年前から巽家使用人になった2年前まで、猿彦が何をしていたのかは不明ですが、昔関わりのあった女を強請りにわざわざ奥飛騨の田舎にやって来るあたり、やはり駄目男なんだなぁ、という印象です。

★猿彦はマシな方? 「オペラ座館殺人事件」三部作の関係者、黒沢和馬氏は教え子はクズばかり…。

【金田一少年の事件簿】「オペラ座館殺人事件」三部作の関係者、黒沢和馬の不運過ぎる人生を辿ってみた

★「秘宝島殺人事件」では、犯人に同情してしまうほどにその周囲の人物がクズ過ぎました。

【金田一少年の事件簿】「秘宝島殺人事件」登場人物の家族関係が地味にエグい

猿彦の仕事ぶり

では、同僚から「ズル賢い所があった」と評された猿彦ですが、実際に彼の使用人としての仕事ぶりはどうだったのでしょうか。

無愛想

猿彦は、(赤沼の偽装トリック込みとはいえ)仮にも奥様である紫乃のお客様をお出迎えする役目を仰せつかりながら、とても無愛想です。

接客が本業ではないからこれは仕方ないにしても、

(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版11巻10ページ)

剣持警部=お客様の挨拶くらいは最後まで聞けや、と言いたい。

直前まで黒子の格好で赤沼に扮していたために、疲れていたのでしょうか。

案内が雑

賊の侵入を防ぐための「足払い」、金田一少年が知らずに玄関に入ろうとすると、

(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版11巻12ページ)

躊躇なく、後ろから襟足を掴んで引き留める暴挙

お客様を先に屋敷内にお通しするのはいいとして、危険な場所があるなら先に注意をしておけばいいだけの話では…?

いくら金田一少年が高校生の子どもだとはいえ、接客が雑過ぎます。

雇い主の部屋を勝手に開ける

極めつけは、医者の問診中に奥様の部屋の障子を断りなしに開けてしまうという大ミス。

(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版11巻13ページ)

猿彦自身は部屋の中を見ていないのでしょうが、本来ならば紫乃から大目玉を食らっても仕方ない大失敗です。

紫乃と猿彦は脅迫関係及び共犯関係にあり、過去は男女の仲だったからこそ、猿彦も舐め腐っていたのでしょうか。

金田一少年シリーズの定番お色気シーンのひとつではありましたが、猿彦の雑な使用人っぷりが悪目立ちするシーンでした。

庭木の手入れはお手の物?

ここまで猿彦の駄目っぷりばかり列挙してしまいましたが、彼は庭木の手入れは得意だったようです。

(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版11巻179ページ)

巽家の庭木は、猿彦の仕事のひとつでした。

広大なお屋敷であっただろう巽家ですから、庭もそれなりに広かったでしょう。

名家の巽家ならばプロの庭師を入れて庭の手入れをしても良さそうなものなのに、使用人の猿彦が担当していたとなると、猿彦は最低でも見た目悪くない程度に庭木を手入れできたのではないか、と思われます。

武将・柊兼春

猿彦の人柄が知れた所で、おまけで猿彦と縁があったと勘違いされたのがこちらの方です。

(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版11巻114ページ)

「飛騨からくり屋敷殺人事件」に登場する柊兼春は、関ヶ原の合戦時代の武将です。(もちろん実在はしません)

兼春が巽家の祖先によって討たれたために、巽家と柊家は因縁のある関係でした。

その柊家の家紋の入った刀が猿彦の荷物にあったことで、実際は完全に無関係なのに、柊兼春の子孫が猿彦だったと剣持警部はミスリードされました。

(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版11巻150ページ)

柊家の家紋は、苗字の通り柊に見えます。回想シーンにあった柊兼春の兜にも、同じような柊をかたどったものでがありました。

また上記の通り、猿彦は栃木県日光市出身で、そんな猿彦と柊家を繋ぐものは家紋入りの刀しかなかったですが、裏設定で柊家が栃木出身の戦国武将だったから剣持警部をミスリードできたのでは…、なんて考えると面白いですね。

柊家と冬木家

しかし、柊家の本当の子孫は冬木医師一族だと思われます。

(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版11巻3ページ)

出番が少なすぎて後半の登場人物紹介で涙を流した冬木医師の母・ウメさんは、生首神社に置いてあった柊兼春の鎧がなくなっていたことを「我が一族」と表現し歓喜しています。(鎧は紫乃と猿彦が持ち出したと思われる)

(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版12巻84ページ)

事件の本当の始まりである紫乃による嬰児交換、これも柊家の子孫である冬木医師が黙認していたのでは?と金田一少年に指摘された冬木医師は、一人になってから後悔する言葉を口にします

 

柊の漢字を分解すると「木」と「冬」、冬木一族が柊家の子孫であることは間違いない

 

でしょう。

「猿彦が柊家の子孫である」と剣持警部がミスリードされた時、冬木医師は内心で、「お前(猿彦)誰やー!」って突っ込んでいたでしょうね。

首狩り武者の伝説

兼春の呪いによってかつての家来たちが首なし遺体となり、代わりに地蔵の首が持ち去られたという、くちなし村に伝わる首狩り武者の伝説。

(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版11巻116ページ)

現代になっても、特に巽家の人間は首狩り武者の亡霊を恐れていたと言います。

仮に、兼春が400年も前に事件の舞台となった現くちなし村で討たれたことが史実だとすれば、

いつの頃からなのか子孫の冬木一族がくちなし村に移住している経緯が謎

です。

冬木一族が柊家の子孫だと村の者が知れば、皆さん平成の世になっても兼春の呪いを信じているように見えるので、恐ろしくて追い出していそうなものですが…。

物語冒頭で冬木ウメさんが兼春の呪いを口にした時にかんしゃく持ちだと言われる龍之介ですら無言だったこと。
剣持警部の推理で猿彦が柊兼春の子孫だと公表された時に龍之介が驚いていたこと。

この二点を鑑みると、

 

村人は冬木一族が柊家の子孫だとは知らない

 

可能性が高いです。

(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版11巻32ページ)

巽家の庭に不法(?)侵入したウメさんが堂々と巽家を罵っていた姿は自分が柊家の子孫だと主張しているようなものですが、そもそも冬木一族が柊家の子孫なことが周知の事実であれば、

 

首狩り武者の亡霊を恐れている巽家の人間は冬木医師をお抱え医師にしない

 

でしょう。

冬木医師が柊家子孫だと知った上で、先代当主蔵之介が亡くなってから紫乃が独断で冬木医師を主治医にしたのなら、巽家三兄弟が紫乃を快く思わないのは当然であり、しかし冬木医師はくちなし村で唯一の医師ということなので巽家以外の村人もお世話になっているはずで、少なくとも冬木医師は村で孤立はしていないようです。

では、

 

どのような経緯があって、冬木一族がくちなし村に居住するようになったのか…。

ウメさんが言っていたように、柊家の悲願=兼春の呪い発動が果たされるのを、いつの頃からかひたすら現地で待つようになったのはなぜなのか…。

 

(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版11巻93ページ)

生首祭りでは何やら布に包まれたものを祀っていて、これはおそらく、柊兼春の首を表しています。

首狩り武者の伝説含め、現在まで続く兼春を祀る生首祭り、柊家の子孫も住むくちなし村の現状は、民俗学的に考察すれば非常に興味深いものなのでしょうね。

まとめ

「飛騨からくり屋敷殺人事件」において、巽家使用人の仙田猿彦について、考察してみました。

意外と登場シーンが少なく、回想シーンはクズっぷりしか発揮されていなかった猿彦は、考察してみてもクズっぷりが目立つ犯人でした。

猿彦の祖先であるとミスリードされた武将・柊兼春と、本当の子孫である冬木一族には謎が残る一面もあり、個人的には金田一少年シリーズの面白さが詰まったお話でした。

★「飛騨からくり屋敷殺人事件」の犯人、首狩り武者の誤算とは?

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「飛騨からくり屋敷学園殺人事件」は、金田一少年シリーズ第9話です。

スピンオフ外伝漫画はギャグ漫画です。

 

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