【金田一少年の事件簿】「蠟人形城殺人事件」犯人、Mr.レッドラムが計画実行まで時間を空けた譲れない理由とは?

 

金田一少年の事件簿の「蠟人形城殺人事件」で、犯人「Mr.レッドラム」が犯罪計画実行まで時間を空けた理由について考察します。

 

*以下、最初から最後まで「蠟人形城殺人事件」のネタバレ(犯人等)が全開なので、未読の方は要注意*

 

犯人「Mr.レッドラム」とは

(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版16巻93ページ)

犯人は、多岐川かほる。

日本に移築されたドイツの古城、バルト城で行われた推理イベントの参加者三人を次々と手にかけ、金田一少年シリーズでは超お馴染み、警視庁捜査一課のエリート警視、明智健吾に罪をなすりつけようとしました。

動機は、20年以上前に交際していた恋人の復讐です。

「完成された犯罪は芸術だ」

と言うヤバイ思想を持っていた当時大学生の多岐川の恋人・狭山恭次は、日本では超有名な未解決事件、あの「三億円事件」の立案者で、主犯でした。(もちろん、金田一少年シリーズの中の設定というだけで、現実ではありません)

多岐川含む大学の犯罪研究会のメンバー5人で実行した、後に「三億円事件」と呼ばれるようになった現金強奪事件は、狭山はあくまで

「完全犯罪」=「芸術」

だという独りよがりの強い信念があったため、強奪した現金はすぐに山分けせず、民事の時効が切れる20年は使用しない、と仲間たちに宣言しましたが、多岐川以外の3人は狭山の言い分に反発。

狭山と多岐川は仲間たちに頭部を強打され建設現場に埋められたものの、多岐川だけが奇跡的に生還、半年後に現場に戻れた時には狭山が埋まっているはずの場所には既に建物が建っており、恋人がこの世にいないことに絶望した多岐川は、その場で彼を亡き者にした3人に復讐を誓い、20年以上も経ってから復讐計画を実行したのです。

★同じく恋人の復讐が動機の「首吊り学園殺人事件」犯人を考察した記事は、こちらから。

【金田一少年の事件簿】「首吊り学園殺人事件」金田一少年シリーズ史上、最強かつ完璧な犯人、地獄の子守唄が唯一やらかしたミスとは?

計画実行まで20年以上も待った譲れない理由

多岐川かほるは、大学1年生の冬に恋人の狭山らと三億円事件を実行に移し、今で言うサークル仲間たちだった当麻・坂東・リチャードらに狭山をころされたことで、彼らに復讐を誓いました。

それから20年以上……連載当時の1995年から計算すれば、正確には27年経ってから、推理イベントであるミステリーナイトが開催されたバルト城で、復讐計画を実行しています。

(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版17巻57ページ)

彼らが三億円事件を起こしたのは、現実の三億円事件と同じ、1968年(昭和43)年12月10日でした。

蠟人形城殺人事件が連載していたのは1995年(平成7年)なので、単純に考えれば27年前です。

45歳の多岐川は当時18歳の大学1年生、当麻と坂東は20歳だったわけですね。(リチャードは年齢不詳)

あくまで連載当時の年を基準にしているだけで詳細は不明なので、漫画の中でも「20数年」と年数はぼやけた表現にしているのでしょうが、なんにせよ20年以上も復讐を待った理由を、多岐川自身はこう言っています。

(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版17巻68ページ)

現金強奪のお金を元手に社会的地位を手にして、犯罪の時効も切れて安心し切っている時が、復讐の絶好のタイミングだと考えたようです。

正直、整形まで行い、20~30代も含めた20数年を復讐のためだけに生きていたなら、

 

よほどの執念

 

と表現できるでしょう。

その執念が約四半世紀も彼女を耐えさせることとなったのですが、すぐに復讐しなかった理由として、社会的地位を手に入れた彼らをどん底に落とす、という以外にも、譲れなかった理由がいくつか考えられます。

★「悲恋湖伝説殺人事件」犯人の動機も恋人の復讐……詳細不明なターゲットを皆ごろしと考えたのは、多岐川とは違った“執念”でした。

【金田一少年の事件簿】「悲恋湖伝説殺人事件」犯人の最終目的は何だったのか

 

恋人の信念を守りたかった

被害者たちの時効の失効を待っていたのは、彼らをどん底に突き落とすと同時に、

 

恋人の「芸術作品」を傷つけたくなかった

 

と考えられます。

「完成された犯罪は芸術」

という考えを持っていた恋人の信念を受け継いでいた多岐川にとって、どんなに憎い相手でも、彼らが警察に捕まってしまうのは本望ではなかったはずで、

(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版17巻74ページ)

彼女自身、恋人のポリシーを守り抜くため、自らの命を顧みずに城に火を放ちます。

蠟人形城での事件は金田一少年によって見破られしまったとはいえ、

 

多岐川は恋人の「完成された芸術作品」を守ることを何より重要視していたので、被害者の時効を失効させる必要があった

 

のです。

そしてその「芸術作品」が完成させられる目安は、狭山が言っていた民事の時効が来るまでの、20年

最低でも20年は、多岐川は恋人のために、復讐を待たなくてはいけなかったのです。

バルト城の改装

恋人の「芸術作品」を完成させた時点で、「三億円事件」から20年が経過しています。

被害者たちも40歳前後となり、既に社会的地位を手に入れていてもおかしくない年代となりましたが、多岐川はこの時点でもすぐに復讐しませんでした。

 

なぜか?

 

これは推測ですが、

 

おそらく時効が失効した後に、バルト城が売り出された

 

のだと思われます。

「いざ復讐劇を始めよう」のタイミングで、恋人の遺体が埋まっている因縁の土地建物が売り出され、しかもその場所にちなんだ恋人考案の「犯罪計画」が手元にあれば、多岐川ならば即決で買ったに違いありません。

(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版17巻69ページ)

「だいぶ以前に」

抽象的な表現ではありますが、御年45歳の多岐川の感覚での「だいぶ以前」は、数週間前や数ヵ月前ではないように感じます。

数年ほど前でも「だいぶ以前に」という表現は当てはまるため、バルト城はこの1年ほどの間に売り出されたものではなかったのではないでしょうか。

つまり、数年以上前の「だいぶ以前に」土地建物を購入した後は、恋人のメモから犯罪計画を完璧に履修、計画に沿って建物内を改装、備品の確保などなど…。

自身の小説家としての仕事と並行しながら計画を進めていたら、自然と時間が過ぎてしまったのでしょう。

なんといっても、「完成された犯罪は芸術」というのが、亡き恋人から受け継いだ多岐川の信念です。

中途半端な準備や妥協は一切許さず、恋人が遺した犯罪計画を基に完璧に下準備を整えていたら、否応もなく時間が過ぎていたのだと思われます。

蝋人形の製作練習をしていた可能性!?

蠟人形城殺人事件での見せ場トリックの重要小道具、蝋人形

ミステリーナイト参加者に似せた蝋人形は、総勢10体にも及びました。

(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版16巻47ページ)

原作はもちろん、ドラマ版でも演出が怖くて不気味さが際立っていましたね。

トリック遂行のために絶対必需品だったこの蝋人形、犯人視点のスピンオフ作品によれば、

(船津紳平/さとうふみや/金成陽三郎/天樹征丸、講談社「犯人たちの事件簿」1巻98ページ)

短くても、一体を完成させるまで数ヵ月もかかるとのことで…。

精巧に作るのは顔部分だけで良いとはいえ(首から下は発泡スチロールで代用)、その顔が一番難しそうです。

正直、素人が本人によく似せて作るのは結構至難だと思われますが、「犯人たちの事件簿」によれば、全部犯人である多岐川かほる本人の手作り!(笑)

この下りは相当笑わせて貰ったものの、リアルに考察すると、さすがに多岐川一人で数ヵ月もかけて蝋人形は製作していないと思われます。

その理由は、

 

ミステリーナイトへの応募から開催まで、時間がなさすぎるから

 

です。

(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版16巻11ページ)

金田一少年は、明智警視の一存でミステリーナイトに応募されていて、ここに犯人である多岐川の意思は入っていません

つまり多岐川には、

 

被害者以外の参加者たちの蝋人形を事前に用意しておくことは不可能

 

であり、参加者から応募が来た時点で初めて蝋人形の製作に入れたということです。

明智警視が金田一少年をミステリーナイトに応募させたと申し出たのは定期テストの2日前、この時点で招待状送付までたったの2~3日なので、定期テストが行われた頃に招待状が送付されていたことがわかります。

数日後の答案返却日に、美雪が金田一少年にミステリーナイトへの参加をお願いしている=金田一少年のミステリーナイト参加は確定していることから、この頃既に招待状が金田一少年の元に届いているのは明白で、

(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版16巻11ページ)

更に開催日は、定期テスト2日前の時点で、「今度の連休中」です。

仮に数ヵ月先の連休を「今度」と表現するのは少々違和感があるのと、物語冒頭で金田一少年を叱っていた教師も、

「テストで90点以上取らないと連休は追試!」

と言っていることから、定期テスト直後に連休があったと思われます。

また、明智警視が数ヵ月も前にミステリーナイトに応募していたなら、直前になるまで金田一少年に何も申告しないのは不自然なのと、犯人の多岐川にしてみたらターゲットが確定している復讐劇なので、その他の参加者を募るためだけの応募期間はさほど長くないだろうと推測すれば、実際に明智警視がミステリーナイトに応募したのは、長くても定期テストよりせいぜい1ヵ月以内

つまり、

 

応募から開催まで長く見積もっても1ヵ月ほどしか期間がない中で、多岐川は厳選した参加者たちの顔を蝋人形で製作しなければいけなかった

 

のです。

しかも、上記の通り金田一少年のパートナーである美雪は、急遽金田一少年の不正カンニングの口止め料としての飛び込み参加だったので、尚更に多岐川にとっては予定外の参加者だったわけです。

それにも関わらず、多岐川は短い期間で参加者全員の蝋人形を準備してきました。

 

どうやって、蝋人形の準備を可能としたのか?

 

当然、専門の業者さんに外注するのが一番楽な手順ですが、外部に委託することで足がつくことを恐れれば、自作するしか方法はありません。

ここで、20年で時効が切れた後すぐに復讐しなかった理由として、

 

多岐川が単身、蝋人形作りの練習をしていた可能性!?

 

…も、浮上してきました。

バルト城が売り出されて蠟人形をモチーフとした犯罪計画で復讐しようと決めた時点で、バルト城の改築や本職である小説執筆の他、蠟人形作りの練習にも励んでいたため、時効が失効した直後も復讐計画を実行できなかったのです。

(船津紳平/さとうふみや/金成陽三郎/天樹征丸、講談社「犯人たちの事件簿」1巻96ページ)

蠟人形作りに数ヵ月もかけていたわけではなく、参加者を厳選してから開催までのラストスパートで、必死になって蠟人形をせっせと製作していたのが、こちらの1コマだったというわけですね。

20年以上も待たなければいけなかった理由がいくつか絡み合っての復讐劇だったので、

「あまりに長い道のりだった――」

というわけです。

★恋人の復讐が共通点の「オペラ座館殺人事件」犯人も、事前準備は入念でした。

【金田一少年の事件簿】「オペラ座館殺人事件」犯人 歌月の犯行までの下準備を暴いてみた

まとめ

「蠟人形城殺人事件」で、犯人「Mr.レッドラム」が犯罪計画実行まで時間を空けた理由について、考察してみました。

20年以上も前に恋人をころされてその場で復讐を誓いながらも犯人がすぐに実行しなかった他の理由は、「完成された犯罪は芸術」という恋人のポリシーを守るために、自分たちが犯した犯罪の時効を失効させる必要があったからでした。

トリックの小道具である蝋人形作りの練習を含めた入念な準備も、更なる時間を要したのだと推測できます。

整形までして20~30代の若い時代をただひたすらに復讐のために過ごしていた犯人ですから、ラストの「犯罪は芸術なんかじゃない!」と言う金田一少年の台詞は、まさにシリーズ屈指の名言でした。

 

「蠟人形城殺人事件」は、金田一少年シリーズ第12話です。

犯人視点のスピンオフ漫画は完全にギャグなので 、安心(?)して笑って読めます。

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*本ページの情報は2022年8月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXTサイトにてご確認ください。

 

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