旧声優陣でのドラえもんシリーズでは第3作目だった「のび太の大魔境」。
2014年に現声優陣でのリメイク版が発表されているので、原作や旧作映画と比較しながら、「新・のび太の大魔境~ペコと5人の探検隊~」の感想をつらつらと述べていきます。
*以下、映画のネタバレがあるのでご注意ください*
映画ドラえもん 新・のび太の大魔境 ~ペコと5人の探検隊~
1982年に公開された「のび太の大魔境」のリメイク映画です。
新スタッフ陣では、映画シリーズ第9作目に当たります。
大まかに旧作と比較してみながら、感想を述べます。
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リメイク版「大魔境」の最大の特徴として言えるのは、
とにかく原作に忠実
ということです。
「新・宇宙開拓史」や「新・のび太と鉄人兵団」のように、新キャラや新要素が出ることはなく、原作ファンならば安心して観ていられます。
原作漫画を何百回読んでいる身からすると台詞回しも本当に原作に忠実で、反面、原作から大きな変更・改変点がないため、映画を観ていると途中で中だるみしてしまうかもしれませんが、原作ファンの私は非常に満足できるリメイク映画でした。
旧作映画ではカットされている原作部分もリメイク版では忠実に再現されていることが多く、これも原作ファンとしては非常に嬉しかったですね。
個人的に名言である台詞も、リメイク版では全て余すことなく再現してくれていました。
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何より、「大魔境」屈指の名シーンでもある、終盤でのジャイアンとペコのシーン。
藤子・F・不二雄、小学館「大長編ドラえもんVOL.3 のび太の大魔境」160ページより引用
旧作映画ではここで主題歌の「だからみんなで」が流れるのですが、リメイク版ではどうなるかと思いきや、旧作映画と同じく挿入歌「友達」が流れ、台詞が聞こえない演出は同じでした。
人によっては「演出が変わらずつまらん」と思うかもしれませんが、それだけ、
このシーンの完成度が高い
ということなのだろうと私は感じましたね。
ジャイアンとペコのシーンは子ども目線でも非常に印象深い良いシーンで、大人になって見直しても変わらず名シーンだったので、原作ファンとしては変に改変してくれなくて良かったと思ったのが正直な所です。
原作を補強する程度の演出が◎
「新・のび太の日本誕生」でも同じことが言えますが、
原作を改悪することない補強演出
が見事で、この点も非常に良かったです。
冒険初日、ペコと初対面になるジャイアンたちの会話から始まり、バウワンコ王国に辿り着いた時に垣間見えた風車を使った国民のリアルな生活風景、改めてペコがドラえもんたちに国難を救うことを頼む演出、ラストに見せてくれたのび太とペコの抱擁など、原作や旧作映画では描かれなかったシーンもとても良いですね。
どれもこれも、原作設定を改悪するものではなく、あくまで原作を補強する演出なので、観ていて違和感がなかったです。
*新ドラシリーズによる映画第4弾「新・のび太の宇宙開拓史」では、原作設定を改悪していたので違和感マックスでした。
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また、新ドラシリーズでは定番になっていますが、のび太とゲストキャラとの交流を描いたシーン。
これも、今作は違和感なかったですね。
「大魔境」は個人的に“ジャイアン回”と呼んでいるほど、ジャイアンが目立つ・活躍する物語だと思っていて、だからこそ個人的名シーンも先程申し上げた終盤のジャイアンとペコのシーンなのですが、
元々ペコの飼い主はのび太ですから、ペコとのび太の心の交流が追加されて素晴らしい!
と思いました。
王子であるペコの悩みは至極当然のことで、それをのび太なりに慰め元気づけ、最後はペコを飼うきっかけとなった、あのソーセージ!!
絶体絶命の大ピンチでは、
「人間界で暮らせばいいじゃない!」
と言うのび太の悲痛な叫び、国を背負う王子だからこそそれを断るペコの覚悟……
か~ら~の、
ラストのあの抱擁には、非っっ常に感動しました!
30分枠の通常版ではクズっぷりを発揮することも多いのび太ですが(笑)、今作映画版でも、のび太の最大の長所である他人を思いやる優しさが遺憾なく発揮されていましたね。
ジャイアンに向けて左頬を拳で叩くペコの仕草も、ジャイアンとの絆を感じさせてくれる感動のワンシーンとなりました。
ゲストキャラの魅力アップ
リメイク版で驚いたのが、
サベール隊長のイケメンっぷり
です。
藤子・F・不二雄、小学館「大長編ドラえもんVOL.3 のび太の大魔境」130ページより引用
原作でも剣の名手とはいえ、さほど目立つ悪役というわけでもなかったのですが、リメイク版ではイケオジ(?)度が格段にグレードアップ!
私イチオシの悪役「のび太の宇宙開拓史」に登場する敵役・ギラーミンの如く正々堂々とした戦いっぷりと自分の負けを認める潔さ、旧作映画での柴田秀勝さんの渋味のある声を受け継いだの如く、イケボだった小栗旬さんの演技、素直に自分がやらかしたことを申し出るペコの如く、平民かつ子どものチッポにも謝罪する誠実さ、どれを取ってもステキ悪役でした。
おかげ様で、悪役の中ではリメイク版サベール隊長の株が急上昇(笑)
悪大臣ダブランダーは変わらず小悪党で、声優も飯塚昭三さん、聞いてて腹の立つ悪役演技には脱帽です。
藤子・F・不二雄、小学館「大長編ドラえもんVOL.3 のび太の大魔境」118ページより引用
ドラえもんの道具に普通に頼っている、ペコことクンタック王子は、原作よりもちゃっかり具合がなくなりました。
リメイク版では、まさに一国の王子らしい、強く優しく、そして誠実な人(犬)柄でした。
藤子・F・不二雄、小学館「大長編ドラえもんVOL.3 のび太の大魔境」113ページより引用
原作のペコは少々オッサン臭い所があり、しかし足を組んで偉そうにしているリメイク版ペコも少し観たかったような…(笑)
スピアナ姫は、原作とだいぶ外見が変わりましたね。
終盤での王子との抱擁はとても良いシーンだったのですが、こちらはやはり、プロの方に演じて頂きたかったです。
モブの兵士二人も、去り際の「当たり前~」はいらなかったですね。
過剰なのび太の演出はいらない
さて、リメイク版「大魔境」で少々残念だと思ったのが、
過剰なまでののび太の活躍っぷり
です。
これは最近の新ドラシリーズほぼ全てに共通することなので、今作に限ったことではありません。
巨神像に乗り込んでからの終盤、リメイク版では、のび太 vs サベール隊長の一騎打ちになりました。
旧作映画のように剣の名手であるペコとの一騎打ちでもカッコ良かったでしょうが、今作はあくまで原作に準拠しているので、のび太との一騎打ちになったのでしょう。
藤子・F・不二雄、小学館「大長編ドラえもんVOL.3 のび太の大魔境」174ページより引用
もちろん、「名刀電光丸」のおかげでのび太はサベール隊長と互角に戦うことができているわけですが、原作では決着が着かずに業を煮やしたのび太が、上段に振りかぶって頭を叩き切る形で勝利しています。
リメイク版でも同じく、のび太は上段に振りかぶって正面を狙いに来て、そこを胴がガラ空きになったサベール隊長が突きに行く形となりました。
しかし、バウワンコ像が動き出したことでサベール隊長の足元が揺れ、運良くのび太がサベール隊長の頭を叩き割ることに成功します。
が、リメイク版では名刀電光丸の電池が切れた状態
なのです。
剣道経験者から言わせて貰うと、電池が切れてから像が揺れるまで、どんなに短く見積もっても10数秒ほどありましたが、その間相手がド素人ならば、余裕で勝てます。
いくらのび太が火事場の馬鹿力を発揮していたとしても、元々運動神経がなく疲労困憊状態では、ペコと同じく剣の達人であるサベール隊長には勝ち目はなかったでしょう。
しかも、未経験者が何の策もなく正面から剣を振りかぶったガラ空き状態の身体を突きに行っているので、いくら足元が揺れて転びそうになっても、達人だからこそ相手にトドメを刺せるほどの体幹は備わっていたはずで、あそこで体勢を崩してサクッと負けてしまうのは、ちょっと不自然でしたね。
のび太に華を持たせたいのはわかりますが、サベール隊長をあそこまでカッコ良く演出していただけに、だったら原作のように電光丸の電池切れなど起こさずに勝っていれば不自然さが残らなかったのに、とその点においては残念に感じました。
種目がのび太の超得意分野である射撃ならば、大いに納得できるんですけどね。
それでも、潔く負けを認めるサベール隊長にはやはり、「のび太の宇宙開拓史」の原作ギラーミン氏のようなイケオジっぷりを感じました。
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サベール隊長の兜が割れた瞬間に、「フワサ…」と狼のような耳が現れるのも、個人的に可愛くて好きな演出です。
まとめ
原作にほぼ忠実だった、リメイク版「新・大魔境~ペコと5人の探検隊~」。
「ジャイアンがカッコイイシリーズ」第一弾映画でもあり、リメイク版では更に、敵役のサベール隊長もカッコ良くなっていました。
忠実過ぎて中だるみすることもあるでしょうが、原作ファンの立場からすると、原作を改悪せずに所々で素晴らしい演出もあって、非常に楽しめるリメイク版映画でした。
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「新・大魔境~ペコと5人の探検隊~」は、新ドラえもん映画シリーズ第9作目です。
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旧作映画は1982年公開でした。
リメイク版「大魔境」は、本当に原作に忠実です。
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