金田一少年の事件簿の「秘宝島殺人事件」から、犯人である 招かれざる客 の凄すぎる無双っぷりについて考察します。
*以下、最初から最後まで「秘宝島殺人事件」のネタバレ(犯人等)が全開なので、未読の方は要注意*
犯人「招かれざる客」とは
(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版5巻170ページ)
怪人名は画像の山童ではなくて、「招かれざる客」です。
正体は、美作碧……に変装した、佐伯航一郎。
自分の父を死に追いやり、後に大切な人となった美作碧を死に追い込んだ原因を作った大人たち全員に復讐するため、子どもながら物凄い手際の良さで任務?を完遂しました。
見た目は子ども、頭脳は大人!?
航一郎はこの事件の時で13歳、まだ声変わりもしていない少年でした。
体つきもまだ大人の男性には程遠かったおかげなのか、17歳の女性である美作碧に変装することができた……とのこと。
(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版5巻161ページ)
17歳のうら若き女性ではなく、まさに男の娘だったというわけです。
しかし、ちょうど身内にこの年頃の少年がいますが、声変わり前だとしても声はやっぱり男の子だし、女性に変装するのってリアルだとかなり厳しいような…。
航一郎は御母上がアメリカ人の舞台女優ということでつまりハーフさんですし、きっと中性的な顔立ちの美少年だったのでしょう。
(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版6巻150ページ)
こちらはアメリカにいた頃の航一郎君。
いわゆる不良少年です。
航一郎は、考古学教授だった御父上の佐伯京助氏が亡くなってからは母方のアメリカの親戚に引き取られ、そこで酷い虐待に遭い、更に養護施設を逃げてからはかなり荒んだ生活をしていました。
そんな時、父親を死に追いやった一人である美作大介の娘、美作碧と偶然再会し、最初は父親の復讐目的で近付きましたが、いつの間にか彼女を好きになり…。
そして、美作碧が自ら命を断ったことをきっかけに、航一郎は復讐を決意します。
見た目は13歳の美少年、そんな彼が考え出したトリックが、17歳の美作碧になりきることでした。
(船津紳平/さとうふみや/金成陽三郎/天樹征丸、講談社「犯人たちの事件簿」1巻140ページ)
なのでまずは、お化粧の勉強から始めることに…。
お化粧をマスターさえしてしまえば、あとは3歳で英語やフランス語も喋れたほどの天才少年、航一郎の独壇場でした。
一般的な17歳の女性に変装ができるほどの体型の少年が、成人男性を次々と、山童伝説になぞらえた方法で5人もバッサバッサと手にかけて行くのです。(内一人は想定外の犯行)
しかも、やり方がエグイ。
事件第二の被害者である柿本は頸動脈をかっ切ったようですし、他にも自分のアリバイを確保するために、鶏の首を同じようにかっ切って部屋中血まみれにしたり、遺体をバラバラにしたり、そのバラバラの遺体を夜中に一人で運んだり…。
これ、未成年の少年が一人でやったことですからね?
(しかも日本では触法少年と言われる13歳…)
(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版6巻164ページ)
金田一少年も、事件が解決した後はこのような、称賛を含んだような言い方をしています。
見た目は17歳の美少女…ではなく、13歳の美少年でしたが、頭脳はIQ180の金田一少年も驚くほど、相当頭が良かったことが窺えます。
そもそも、航一郎の初めての犯罪は更に幼少期の9歳ですからね…。(事故に見せかけて伯父を亡き者にしている)
★航一郎の家族関係は地味にエグいです。
【金田一少年の事件簿】「秘宝島殺人事件」登場人物の家族関係が地味にエグい料理もできちゃうスパダリ少年
自分のアリバイ確保のために、鶏の血を被害者のコテージに撒いた航一郎。
この鶏を、翌日の朝食で全てチキン料理にできてしまうレベルで料理もそこそこできたようですから、航一郎の家事スキルは侮れません。
(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版5巻189ページ)
スーパーで買ってくる鶏肉を調理するのではなく、血抜きした後の鶏を解体して調理するのですから、立派なものです。
悲報島の持ち主である美作大介が自給自足をできるために家畜も飼っていたため、娘の碧にも家畜の解体から調理までを教え込み、その知識を碧から航一郎に伝授したのかもしれませんが…。
碧と航一郎は何の不自由もないアメリカで再会しているので、一般人ではレアな作業である家畜の解体作業を教えることがあったのかは、正直微妙な所ですね。
しかし、なんにせよ航一郎は悲報島にやって来た大人たちの身の回りの世話を、誰に不自然に思われることなくソツなくこなしていたようですし、半分は演技だったとはいえ気配りもしっかりとできる少年だったのでしょう。
抜群の演技力で金田一少年をも惑わす
御母上が舞台女優だったからなのか航一郎は演技の才能もあったらしく、本格的な演技の稽古をしていないはずなのに、周囲の大人だけでなく、幼少期に本物の美作碧と顔見知りだった執事の岩田英作にも気付かれないほど、「美作碧」になりきっていました。
突然岩田に話しかけられても動揺せず、
(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版5巻163ページ)
この碧スマイルで、以降の航一郎無双が始まります。
本物の美作碧から岩田のことを聞いていたのか、美作大介から碧に宛てられた手紙に岩田の名前があったのか、どちらにせよ、イレギュラーにも完璧に対応した素晴らしい演技ですね。
(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版5巻163ページ)
最初は金田一少年もメロメロになるほど、完全無欠の「美少女」でした。
これまでは航一郎自身が「ドブネズミ」と揶揄していたほどの荒んだ生活だったのに、上流育ちのお嬢様に違和感なくなりすましができていて、彼の才能には終わりが見えません。
大演出家の黒沢和馬氏なら、迷わずスカウトしちゃうはず…。
★オペラ座館三部作の重要人物、演出家黒沢和馬氏の激動の人生をまとめた記事は、こちらから。
【金田一少年の事件簿】「オペラ座館殺人事件」三部作の関係者、黒沢和馬の不運過ぎる人生を辿ってみた
更に、アメリカの養護施設を逃げた後は浮浪生活、美作碧と再会してからは彼女と過ごしていたのでしょうが、正当な保護者もいない未成年の航一郎が「佐伯航一郎」名義のパスポートを入手するのは困難だったと考えられるため、復讐目的で日本に来る際も「美作碧」のパスポートを使った可能性が高く、そう考えると何の問題も起こさずに来日できたこと自体が、やはり彼の演技力の凄さを物語っています。
航一郎……恐ろしい子っ!
しかし、金田一少年すらも欺いていた完璧な演技力は、トイレの中蓋が上がっていただけであっさりバレてしまいます。
(船津紳平/さとうふみや/金成陽三郎/天樹征丸、講談社「犯人たちの事件簿」1巻147ページ)
いやホント、当時の航一郎の心境はこんな感じだったんだろうなぁ、と(笑)
これまでが完璧過ぎるくらいの超満点演技だっただけに、トイレの便座が上がっているだけで金田一少年に全てを暴かれた時の落差が激しい…。
座りションにしておけば良かったですね。
まとめ
「秘宝島殺人事件」で、犯人「招かれざる客」の完璧過ぎる無双っぷりについて、考察してみました。
3歳で英語とフランス語をマスターし、気配りもできて家畜の解体から調理もできて、金田一少年を唸らすほど頭が良く、残忍ながら一人残らず復讐を遂げ、13歳で17歳の女性を演じ最後まで周囲を欺き続けた犯人、佐伯航一郎は、間違いなくスーパー天才児です。
不幸な生い立ちや生来の天才っぷりは、「異人館村殺人事件」の犯人、七人目のミイラとも若干通じるものがありますね。
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航一郎は逮捕された後も女装趣味が抜けていないらしいので、金田一少年さえ悲報島に呼んでいなければ、クリス少年を犯人に仕立て上げ、復讐が完了した後は「美作碧」として生活……は、さすがにないでしょうね…。
秘宝島殺人事件は、金田一少年シリーズ第5話です。
犯人視点のギャグ物語は、EXファイルとして巻末に掲載されています。
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*本ページの情報は2022年9月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXTサイトにてご確認ください。
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