【金田一少年の事件簿】「オペラ座館殺人事件」三部作の関係者、黒沢和馬の不運過ぎる人生を辿ってみた

 

金田一少年の事件簿「オペラ座館殺人事件」の三部作、これら全てに(少しでも)関わりのある人物、黒沢和馬の不運過ぎる人生を辿ってみました。

ちなみに金田一少年シリーズの「オペラ座館殺人事件」三部作とは、孤島・歌島にあるホテル、オペラ座館で起きた3つの殺人劇のことです。

第一作目が、記念すべきシリーズ一作目でもある「オペラ座館殺人事件」

この続編にあたるのが、小説版の「オペラ座館・新たなる殺人」

更にこの続編にあたるのが、三部作の最後「オペラ座館・第三の殺人」

これら3つの話全てに関わる人物が、ホテル・オペラ座館のオーナー、黒沢和馬なのです。

 

黒沢和馬とは

(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版1巻168ページ)

ホテル・オペラ座館のオーナーであり、かつては有名な劇団「幻想」の演出家でもありました。

黒沢氏が関わったオペラ座館での二度の度重なる惨劇の後、島ごとホテルを売却してから新劇団「遊民蜂起」を立ち上げましたが、オペラ座館三部作最後の作品「オペラ座館・第三の殺人」の冒頭時には車ごと崖から転落しており、遺体は上がっていないものの生存は不可能だということで事故死扱いになっています。

――と、最期は結局生死不明ということになってしまいましたが、少なくとも三部作一作目にしてシリーズ初作品でもある「オペラ座館殺人事件では、頬の大きな傷やたまに見せる明らかな怪しい目つきのおかげで、

「コイツ犯人っぽくね?」

と真っ先に疑われるタイプの人物でした。

★黒沢氏の怪しい目つき満載の「オペラ座館殺人事件」の他の考察記事は、こちらからどうぞ。

【金田一少年の事件簿】「オペラ座館殺人事件」月島冬子の人間関係を探れ! 七瀬美雪とは親しくなかったのか? 【金田一少年の事件簿】「オペラ座館殺人事件」犯人 歌月の犯行までの下準備を暴いてみた

どんな人物だった?

頬にある大きな傷は一見強面にも見えますが、ホテルのオーナーとして自ら接客をするくらいなので愛想も人当りも良く、演出家としても教え子の役者たちから慕われていたようです。

(さとうふみや/天樹征丸、講談社「金田一少年の事件簿 オペラ座館・第三の殺人(上)」24ページ)

後に黒沢が立ち上げた劇団「遊民蜂起」です。
彼の教えを受け継いで、楽しく稽古をしています(ように見えます)。

また金田一少年も黒沢の人柄が好きだったらしく、小説「オペラ座館・新たなる殺人」では、シリーズ第一話「オペラ座館殺人事件」後、久しぶりに黒沢に会えたことを純粋に喜んでいました。

反面、演出家として「オペラ座の怪人」の演出を多数手がけ、大成功を収めたからなのか、「オペラ座の怪人」に対する情熱はある種、異常なほどに執着している面もありました。

とはいえ、一度は演劇界から引退しても名演出家としての手腕は衰えることなく、その人柄も温厚で誰からも慕われることが多かった黒沢和馬氏。

そんな彼の人生は、正直不運続きだったように感じます。

時系列順に、彼の不運な人生を辿ってみることにしましょう。

 

*以下、「オペラ座館三部作」に相当する小説版の「新たなる殺人」、最後の「第三の殺人」の重大なネタバレ(犯人等)がそこらに散りばめられているので、未読の方は要注意*

 

黒沢和馬の不運過ぎる人生を辿ってみた

外見は60手前の初老に近い黒沢和馬氏ですが、おそらく数十年前から演出家として名を馳せており、若い頃はまさに仕事もプライベートも順風満帆だったことでしょう。

では、いつから不運な人生が始まってしまったのか?

それは、若い頃の歌島での生活まで遡ります。

不幸その① 子供の存在を知らされない

黒沢氏は、歌島で作曲家の響静歌と一緒に生活をしていた時期があります。

(さとうふみや/天樹征丸、講談社「金田一少年の事件簿 オペラ座館・第三の殺人(上)」53ページ)

響は引退した後は外見怖いオバチャンですが、おそらく若い頃は

「おそろしい子……!」

で有名な先生並に綺麗だったのかもしれない、多分。でしょう。

もちろん「一緒に生活をしていた」とは、「男女の関係」だったという意味です。

その内に響は黒沢氏の子供を妊娠しましたが、彼の負担になりたくなかったと言う響の計らい?によって、黒沢氏は響が妊娠・出産したという事実を最後まで知らされませんでした。

おそらく生前は、自分に息子がいたなんて夢にも思っていなかったでしょう。

黒沢氏は、舞台女優を目指していた実の娘が親の七光りと言われないよう、娘のために演出家を辞めるくらいの人物でしたから、もしこの時に響が自分の子供を妊娠していると知ったならば、黒沢氏なら響と結婚するなり認知するなりして、しっかりと責任を取っていた可能性が高いです。

逆に知らなかったからこそ、響と結婚せずに別の女性と結婚し、後に腹違いの妹となる美歌が産まれるわけですが……。

もしかすると、響のこの計らいが、これからの黒沢氏の不運人生の始まりのきっかけを作ったのかもしれません。

不幸その② 妻に先立たれる

結局黒沢氏は響とは違う女性と結婚して、美歌という娘に恵まれますが、この妻に先立たれます

妻が亡くなったのは10年前、この時から黒沢氏の唯一の肉親は、一人娘の美歌だけになりました。(本当は息子もいるけど)

それから美歌は、黒沢氏にとって自分よりも大切な宝物になるのです。

不幸その③ 娘に先立たれる

15歳で本格的に舞台女優になることを決めてから、17歳で「オペラ座の怪人」のヒロイン役に抜擢され、初恋の人との結婚も控えていた宝物の美歌が、自ら命を絶ちます

この時の黒沢氏の悲しみは、言葉では言い表せられません…。

(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版1巻125ページ)

4年後の不動高校演劇部の合宿時、顧問の緒方から娘のことを聞かれた黒沢氏は、さすがに娘の死因のことは伏せています。

一人娘の美歌には寛大な父親だった?

美歌が命を絶った4年前の時点で、彼女は17歳。

恋人で婚約も済ませていた同じ劇団員の能条光三郎は、23歳でした。

当時、既に舞台女優になっていたとはいえ、美歌は普通に高校に通っている女子高生でもありました。

現役女子高生が、成人男性23歳と本格交際して婚約……?

命を絶った1ヶ月後には結婚式を控えていた……?

……う~ん、百歩譲って交際は良しとしても、いくら女優とはいえ17歳の女子高生が結婚するって、連載時は平成だった当時の価値観から考えてみても、まだ早すぎというイメージですよね。

結婚するとしても、せめて高校を卒業してから、ではないでしょうか。

しかし、親である黒沢は反対したような雰囲気は全くありません。
反対どころか、応援もしていたような感じです。

黒沢氏、娘の恋愛に関しては非常に甘い寛大だったご様子です。

不幸その④ 所有ホテルを連続殺人事件の舞台にされる

演出家を引退して娘に先立たれた後、黒沢氏は孤島のホテル「オペラ座館」のオーナーとして、隠居生活をしていました。

しかし、自分とは全く関係のない東京の高校演劇部の合宿場所に選ばれたまではいいですが、

ホテルを連続殺人事件の舞台にされ、その時の犯人によって一部屋をボロボロに荒らされ、損害ばかり出てしまいます

(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版1巻75ページ)

だいぶ酷くやられています。
斬鉄剣でも使ったのか、壁にかけている絵画まで真っ二つです。

これだけ派手に荒らされても、黒沢氏はじめ従業員は誰も音で気付きませんでした

劇場は元々取り壊す予定だったとはいえ、恐ろしい事件が起きたとなればホテルの風評被害は免れません。

一部屋はズタズタに切り裂かれてバスルームでは気味の悪い文字まで書かれてしまい、いくら心優しい黒沢氏とはいえ、内心では、

「よくもまぁ、ここまで荒らしてくれたよな…(壁の文字だけで充分だろボケが)

くらいの愚痴は出ていたかもしれません。

不幸その⑤ 再び、所有ホテルを連続殺人事件の舞台にされる

黒沢氏はそれでも心機一転、劇場を取り壊して過去に所属していた劇団「幻想」の教え子たちによる記念公演を開催しようとしますが、

またも連続殺人事件の舞台にされ、更に娘がされた惨い仕打ちを知ることになります

父親として、娘の本当の死の原因を知るのは、かなりきつい現実だったに違いありません。

黒沢和馬は嫌われていたのか?

小説版「新たなる殺人」では、黒沢氏の一人娘、美歌の過去がクローズアップされています。

黒沢氏の教え子でもあった劇団員たちに惨い仕打ちをされた美歌は、自ら命を絶ってしまうのです。

もちろん、黒沢氏はその事実を事件解決時まで知りませんでしたが、元教え子の劇団員たちは、仮にも世間で大演出家と言われ、劇団でも役者として世話になっていた黒沢氏の一人娘に言葉にもしたくないような惨い仕打ちをするなんて、黒沢氏に対して尊敬とか感謝とか、そんな感情一切なかったのでしょうか?

もしかして、実は黒沢氏は劇団員から嫌われていたのでしょうか?

しかし、黒沢氏のことを尊敬していた教え子は多かったようですし、過去に美歌に非道なことをした一人である緑川は、物語の冒頭で金田一と美雪にいけしゃあしゃあと黒沢氏の偉大な功績を嬉々として語っていました。

更に、黒沢氏が悪人とか嫌われていたとかそんな描写はどこにも見当たらないので、単純に劇団員たちがゲスを極めに極めていただけなのでしょう。

黒沢氏、教え子に恵まれなさすぎです。

不幸その⑥ 存在も知らない息子に先立たれる

いやいやそれでもと、娘のかつての恋人の才能のため、娘の遺言のためにと、黒沢氏は若い頃の恋人、響に歌島を売却して、新たに劇団を設立しますが、その後、

存在を知らされていない息子が顔に火傷を負って役者生命を絶たれ、更に命も落とします

(さとうふみや/天樹征丸、講談社「金田一少年の事件簿 オペラ座館・第三の殺人(下)」174ページ)

黒沢氏の実の息子、霧生鋭治です。
イケメンですね。黒沢氏も若い頃はイケメンだったのかもしれません。

霧生は役者の才能があったということで、父親が黒沢氏だということは知らなかったのに、自ら黒沢氏に弟子入りをしていました。

生前の黒沢氏は、教え子の霧生が息子だと全く知らなかったとはいえ、後からでも知ればかなりきつい現実です。

黒沢氏の血を引く二人の子供は、誰もが認めるほど役者としての才能を持っていただけに、余計に残念です。

不幸その⑦ 最期は事故死?

幸か不幸か、霧生の生い立ちを知らずにいた黒沢氏ですが、新しく劇団を設立して活動していた矢先、

黒沢氏の最期は車ごと崖から落ちての事故死でした。

(さとうふみや/天樹征丸、講談社「金田一少年の事件簿 オペラ座館・第三の殺人(上)」10ページ)

事故でないとしたらなんとも恐ろしい話ですが、なんにせよ、せめて最期くらい畳の上で安らかに眠って欲しかったです。

不幸その⑧ 死後、黒沢氏を偲ぶ公演会で連続殺人事件が起きる

全く偲ばれなかった黒沢氏。

死後もこんな仕打ちを受けるなんて、ここまでくると不憫過ぎて泣けてきます

しかも何の因果か、オペラ座館で起きた3件の殺人事件の内、2件は自身の子供が命を落としたことによる恋人の復讐が動機でした。

なんとも不思議な因縁です。

劇団「遊民蜂起」の闇

生前、最後に黒沢氏が携わった劇団が「遊民蜂起」です。

オペラ座館三部作の最後「オペラ座館・第三の殺人」では、小説版「オペラ座館・新たなる殺人」の後に黒沢氏が新たに旗揚げした劇団、「遊民蜂起」の劇団員たちが登場し、次々と3人も命を落とします。(これで三度目…)

黒沢氏の最後の弟子だったこの事件の被害者たちも、数年前に劇団の合宿所で火事を起こし、その火事が原因で黒沢氏の実子でもある霧生が顔に大火傷を負って役者生命を絶たせられ、更に他の数人の新人俳優たちを死なせてしまったのに、最後までしらばっくれたゲスの方々です。

更に、真実を知っていた霧生を樹海に放置して証拠隠滅という、金田一シリーズ定番のクズキングたちです。

もうね、黒沢さんってば教え子に恵まれなさすぎです。

(さとうふみや/天樹征丸、講談社「金田一少年の事件簿 オペラ座館・第三の殺人(下)」145ページ)

クズキングたちに復讐した霧生の恋人だった湖月レオナも、黒沢氏の教え子でした。

可愛い顔して、見た目気持ち悪い毒グモを持ち歩いたり屈強の刑事を後ろから殴打して気絶させたりアリバイ作りのために被害者の手首を切断したりと、やりたい放題のお嬢さんでもありました。

少しは黒沢先生を偲ぼうとする心を持ちなさい。

まとめ

黒沢氏の壮絶な人生、いかがだったでしょうか。

おそらく若い頃に演出家として大成功し、晩年もその名声が衰えることがなかった天才演出家なのに、その人生は非常に数奇で、特に劇団の教え子たちには恵まれなかったという印象が拭えません

教え子同士でいがみ合い、結果黒沢氏の子供が死に追いやられ、その復讐として教え子の一人が殺人事件を起こすという、負のループです。
(三部作一話目の「オペラ座館殺人事件」は黒沢氏とは直接の関係はないですが、動機が亡くなった恋人の復讐だったという点においては共通しています)

なんだか妻に先立たれてからの人生の後半は、プライベートに関しては少々不運続きだったようにも感じますね。

娘の親友であり教え子でもあった加奈井理央から本気で惚れられるほどのダンディー?さも持ち合わせていたイケオジだったのでしょうが、ちょっと同情を禁じ得ない男性でもありました。

★「秘宝島殺人事件」の登場人物たちは、教え子ではなく家族に恵まれませんでした…。

【金田一少年の事件簿】「秘宝島殺人事件」登場人物の家族関係が地味にエグい

 

黒沢氏が初登場するのは、金田一少年シリーズ第一話「オペラ座館殺人事件」です。

「オペラ座館殺人事件」の続編でもあり、黒沢氏の魅力がたくさん詰まった、小説版の第一話に当たるのが「オペラ座館・新たなる殺人」です。
個人的には、小説版では激押し!!の、素晴らしくも泣ける作品です。

オペラ座館三部作の最後を締めくくるのが、「オペラ座館・第三の殺人」です。

 

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