金田一少年の事件簿「首吊り学園殺人事件」から、犯人を暴くため、という名目で金田一少年が心理テストを自作した理由について、考察します。
*以下、「首吊り学園殺人事件」のネタバレ(犯人等)がそこらに散りばめられているので、未読の方は要注意*
首吊り学園殺人事件とは
「首吊り学園殺人事件」は、金田一少年の事件簿の中で起きた事件のひとつで、漫画版ではシリーズ第八話に当たります。
母の目論見で成績アップのため予備校に入学することが決まった金田一少年が、一流大学への進学率が高い四ノ倉学園を舞台に起きる事件に遭遇し、シリーズ史上最強の犯人とも対峙することになるお話です。
★「首吊り学園殺人事件」の犯人である地獄の子守唄がやらかしたミスを考察した記事は、こちらから。
【金田一少年の事件簿】「首吊り学園殺人事件」金田一少年シリーズ史上、最強かつ完璧な犯人、地獄の子守唄が唯一やらかしたミスとは?金田一少年自作の心理テスト
この事件では、金田一少年は犯人である地獄の子守唄=浅野瑤子さんのミスリードに見事引っかかり、一度は事件解決の謎解きまでしてみせました。
(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版10巻65ページ)
それでも、全ての事件が終わった後に言いようのない不安に襲われたのは、名探偵の血筋だからなのか…。
そこから、ちょっとしたヒントで浅野先生の隠れた動機の可能性に気付いた金田一少年は、瞬く間に真相に近付き、
「犯人を暴くため」
に後に関係者全員が受けた心理テストは、謎がすべて解けたその瞬間に作成することを決めています。
(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版10巻84ページ)
ちょっとした質問形式の問ではありますが、これが50問です。
金田一少年、こう見えて実は意外とめちゃくちゃマメなのです。
彼は不自然なく遊びや旅行に幼馴染の美雪を誘うために、隠れて涙ぐましい努力をする可愛らしい男子高校生でもあり(商店街の福引き券をゲットするためにご近所のオバチャンたちの小間使いになったり)、謎解きの場面でもそのマメさを発揮しちゃいます。
だけど、犯人側の人間にしてみたらそのマメさが腹立つもので、
(船津紳平/さとうふみや/金成陽三郎/天樹征丸、講談社「犯人たちの事件簿」4巻151ページ)
今事件の犯人である浅野先生や、「異人館ホテル殺人事件」の犯人も、金田一少年の謎解きエンターテイメントにはドン引きしていました。
★「異人館ホテル殺人事件」の犯人について考察した記事は、こちらから。
【金田一少年の事件簿】「異人館ホテル殺人事件」典型的な努力型の犯人を破滅に追い込んだ原因とは?心理テストで犯人を追い込むが…
金田一少年はいざ心理テストを受けて貰う時、
テストの本当の趣旨を語らず、
50問というそこそこ多い問題数を、
15分という短い時間で解かせる
という超絶テクニックを使って、犯人である浅野先生をガッツリ追い込みます。
(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版10巻96ページ)
「テストの結果が0点の人間がいる」と指摘した後に、浅野先生に0点の答案を返却する金田一少年。
のび太だって、0点取ってここまで青くなることありません。
浅野先生も、美雪が答え合わせしてる時も含めて生きた心地がしなかったんだろうなぁ、と推測できます。
ここから金田一少年の怒涛の反撃で、見事浅野先生の犯行を証明、謎は全て解明されることになったのですが…。
ここで、疑問が浮かびます。
果たして、この心理テストは本当に行う必要はあったのでしょうか?
物的証拠があったにも関わらず
金田一少年自作の心理テストは、警察関係者以外では真犯人しか知り得ない情報を問題にしていました。
詳細はこちらの記事でも考察していますが、
【金田一少年の事件簿】「首吊り学園殺人事件」金田一少年シリーズ史上、最強かつ完璧な犯人、地獄の子守唄が唯一やらかしたミスとは?
犯人ならば自分が事件に関わっていたことを隠しておきたいという心理が働き、正答を避けてしまうもの。
しかし、理論上0点を取る確率は7万分の1で、偶然に0点を取ることはほぼ有り得ないとして、実際に0点だった浅野先生を犯人としてあぶり出します。
が、よく考えてみると、
警察の協力の下でわざわざこんな手の込んだテストを人数分作成して、採点を美雪にやらせて、浅野先生を精神的に追い込まなくても、
物的証拠はあった
じゃないか、と。
(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版10巻131ページ)
「あるんかいッ!!」と言う浅野先生の突っ込みが聞こえてきそうな、金田一少年のドヤ顔です。
物的証拠が何もない中でのこのテストの実施ならば金田一少年の意図は理解できるのですが、物的証拠があればいくら頭の良い犯人でも犯行を証明することは可能であり、つまり、
わざわざ心理テストを行ってまで犯人をあぶり出す必要性はない
のです。
金田一少年が心理テストを自作した理由
では、なぜ金田一少年は、物的証拠を用意していたにも関わらず、わざわざ心理テストを自作したのか。
「犯人を暴くため」
という名目で最初作成されたテストではありますが、その理由ならば上記で申し上げたように特に必要はないはずなので、単純に、
一度ハメられたので、犯人に対して徹底的に反撃したかったから
ではないかと、推測できます。
(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版10巻86ページ)
金田一少年も「反撃」と証言していますし、しかも、かなり激おこのご様子です。
浅野先生の巧みな心理トリックに踊らされたことに、名探偵の血を引く金田一少年は自分に対しても怒っていたでしょうが、その怒りは犯人にも向いていたのです。
だからこそ、精神的に追い込まなくても物的証拠を突き付ければ犯行を証明できる犯人に対し、
おまけ程度の心理テストの威力を最大限に発揮させて、
それはもう徹底的に、無慈悲に、
相手が恐怖で震えるくらいにまで追い詰めた
のです。
「異人館ホテル殺人事件」でも、物的証拠があるのに犯人に寸劇をやらせたりしましたが、今回の事件では金田一少年自ら手の込んだテストを作成している辺り、犯人をハメる本気度がまるで違います。
金田一少年を怒らせると、マジでヤバイということです。
まとめ
「首吊り学園殺人事件」で、金田一少年が犯人を暴き出すために自作した心理テストについて、考察してみました。
あらかじめ物的証拠を用意して、犯人の犯行を証明するには充分だったにも関わらず、精神的に追い込む心理テストを金田一少年がわざわざ自作したのは、
犯人のミスリードに一度完全に乗っかってしまったことで、犯人に対して徹底的に反撃したかった
からだと思われます。
ズボラだと思われがちの金田一少年、推理の場面(と美雪のため)では異様なマメさを発揮する、今どき男子高校生でもありました。(平成時代前半の、ですが)
★金田一少年シリーズ史上、最強の犯人である地獄の子守唄のミスを考察した記事は、こちらから。
【金田一少年の事件簿】「首吊り学園殺人事件」金田一少年シリーズ史上、最強かつ完璧な犯人、地獄の子守唄が唯一やらかしたミスとは?
「首吊り学園殺人事件」は、金田一少年シリーズ第八話です。
犯人視点のギャグ漫画もオススメです。
コメントを残す