【金田一少年の事件簿】「悲恋湖伝説殺人事件」犯人の最終目的は何だったのか

 

金田一少年の事件簿「悲恋湖伝説殺人事件」から、犯人の最終目的について考察します。

 

*以下、最初から最後まで「悲恋湖伝説殺人事件」のネタバレ(犯人等)が全開なので、未読の方は要注意*

 

犯人「ジェイソン」とは

(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版7巻124ページ)

正体は、遠野英治。

金田一少年や美雪と同じ不動高校在学の3年生で、元生徒会長です。

高校生ながら、無関係の人間を巻き込んで4人も手にかけ、美雪も彼が作った罠によって大怪我を負わされました。

動機は、愛していた女性を見ごろしにされた復讐です。

事件3年前に起きた豪華客船オリエンタル号の沈没事故により海に投げ出された恋人ながら実の妹の瑩子は、救命ボートに乗っていた甲田征作氏の腕を掴むも振りほどかれてしまい、命を落とします。

その話を後に目撃者から聞いた遠野は、瑩子の手を振りほどいた人物を逮捕するよう警察に頼むも刑法の規定により罰することができず、自分で復讐することを決意したのです。

★3年前のオリエンタル号衝突事故については、こちらから。

【金田一少年の事件簿】「幽霊客船殺人事件」豪華客船オリエンタル号衝突事故で人生を狂わされた人間たち

★恋人を亡くしたことで復讐を決めた犯人は、他にもいます。

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犯人のアカン発想

瑩子の遺体の手に「S・K」と彫られたキーホルダーがあったため、遠野は瑩子を見ごろしにしたのはイニシャル「S・K」の人間であると確信。

旅行会社である観月旅行社が親の経営する会社の子会社でもあったため、遠野は乗客たちから「S・K」のイニシャルを持つ人間をピックアップしますが、肝心の誰が恋人の瑩子を見ごろしにしたかは不明のまま…。

そこで遠野は、

 

復讐相手が誰かわからないから、とりあえず全員やっとこう☆

 

というトンデモ理論を持って、実際に恋人の死とは無関係の人間ばかりを手にかけて行くのです。

これも若さ故なのか……まぁ当たり前ですが、完全にアッカーン!な思想ですね。

(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版7巻167ページ)

遠野のこの言葉から、それだけ、瑩子さんが遠野にとってかけがえのない女性だったことがわかります。

大切な人の命を赤の他人の命と比べたら、こんな台詞が出てくることも個人的には正直わからなくもないですが…。

しかし逆を返せば、遠野が手にかけた人間だって他の第三者からしたら同じように大切に思われ、遠野と同じ台詞が返ってくる可能性もあるわけで…。

だからなのか、この事件の被害者があえて全員、甲田氏のような善人らしい善人に見えないようにしたのも、ある意味狙ったことなのかな、とも思えます。

あからさまな善人がこんなトンデモ理論で命を奪われたら、愛する人を奪われた犯人の復讐が動機と言われても、全く同情できませんからね。

(後には、身近な人が命を奪われる後味悪い話もありますが…。とは言え、金田一少年シリーズの犯人は動機が復讐のものがほとんどで、動機が復讐の場合、許されない非情な犯罪行為をする犯人にも一定の同情の余地を残してあるのがシリーズの見所でもある、と個人的に考えています)

まぁ、遠野の関しては「全員やっちまえばいい」という発想が無差別過ぎて、同情できない部分の方が大きいんですけどね。

今回の事件の被害者が全員、恋人の瑩子の死とは無関係だっただけに、余計に、です。

★「金田一少年の殺人」犯人 見えざる敵 も、少々内情が違いますが大切な人のために罪なき人間を次々手にかけます。

【金田一少年の事件簿】「金田一少年の殺人」犯人、見えざる敵が見えざる敵になった理由

犯人の復讐計画とは

ここで疑問となってくるのが、

犯人である遠野の復讐計画、及び最終目的

です。

金田一少年シリーズ含め一般的な推理漫画・小説は、トリックを駆使して逮捕されずに逃げ延びることが犯罪行為をする犯人の最終目的になるのでしょうが、遠野の場合、少し特殊な事情があるように思います。

当初の復讐計画

遠野は、漫画の中で実在した死刑囚が脱獄したと言う偽ニュースを事前に用意し、外界に出られないように唯一の交通手段である吊り橋を壊せるほどの小型爆弾?のような危険物まで製作していました。

(船津紳平/さとうふみや/金成陽三郎/天樹征丸、講談社「犯人たちの事件簿」2巻110ページ)

外伝ギャグ漫画では、アナウンス学校に通ってまで偽ニュースの原稿を読んだというオチになりましたが(笑)、こうまでして用意周到に復讐計画を練っていたとすると、

 

遠野は標的を一人ずつ、じっくりとコロしていく予定だったのではないでしょうか。

 

死刑囚ジェイソンの存在を演出することで、ツアー参加者に恐怖心を煽りながら、一人ずつ消していく計画だったのです。

(語弊はありますが)遠野が本来復讐するべき人間はただ一人のはずなのに、そこまでする必要はあるのか?という疑問は残りますが、わざわざジェイソンの偽ニュースと、吊り橋を壊すための爆弾を用意していたという事実を考えると、

 

  1. 代わりの偽犯人(ジェイソン)の存在をアピール
  2. ツアー参加者をロッジがある谷側に閉じ込めたかった

 

ということになり、遠野が一人ずつコロす計画だったのだろうと推測できます。

本来ならば、ツアー参加者がまだ何も知らずに油断している旅行初日の夜中に一気に全員やってしまった方が、面倒な事前トリックも何も必要なかったんですけど、どうして遠野はわざわざ一人ずつ消す方法を選んだのか…。

そこだけは、今でも謎ですね。

復讐計画を練っている内に、厨二病を発症色々ぶっ飛んだ方向に行ってしまったのでしょうか。

犯人の最終目的

では、犯人遠野は従来の犯人のように、最終的に逃げ延びたかったのか。

おそらく遠野は、

 

復讐を果たしたら逃げる計画と共に、自分の命を投げ出すことも恐れていなかった

 

のではと考えられます。

遠野の目的は、3年前の豪華客船沈没事故で恋人の瑩子を見ゴロしにした「S・K」たる人物を、無差別に皆ゴロしにすることです。

遠野の本来の計画では、莫大な価値のある会員権のこともあり、まさか橘川茂が美雪に代役を頼んでツアーに参加しないとは想定していなかったでしょうし、「S・K」全員集合後は予定通りジェイソンの演出をして、恐怖で震える参加者たちを眺めながら一人ずつサツ害する予定だったのでしょう。

(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版7巻151ページ)

計画完遂後には、金田一少年も言っているように、湖に用意してあったボートで逃亡するつもりだったと考えられます。

 

最初から命を断つ気なら、ここにボートを用意する必要はありません。

 

ツアー参加者は全員3年前の船の沈没事故で水に恐怖心を抱えているので、自分にしかできない逃亡手段を用意してあるのは、なんら不思議ではないのです。

もしかしたら、遠野自身はツアーに参加していなかったことにして、かの有名な小説のように、まさに「誰もいなくなった」状態にするつもりだったのかもしれません。(親が観月旅行社の親会社社長だからできること?)

 

しかしツアー初日、橘川茂がまさかの欠席、本人が来ていないという事態に遭遇します。

(船津紳平/さとうふみや/金成陽三郎/天樹征丸、講談社「犯人たちの事件簿」2巻116ページ)

入念に準備していればいるほど、まさにこの心境だったでしょう(笑)

それでも遠野は、機転を利かし、逃走用のボートで橘川をコロしに行く計画に即座にプラン変更します。

つまり、

 

遠野が自分を「コロす」ことにしたのは、ツアー初日に、参加者の一人である橘川茂が来ていないことを知ってから

 

です。

ツアー参加者が初めて全員集合した時に急遽、自分を「コロす」ことにしたわけであり、元々の計画には無かったのです。

 

★「タロット山荘殺人事件」犯人 陰の脅迫者 も、偶然の事態に柔軟に対応しています。

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そして、プラン変更したことで問題になってくるのが、

 

復讐完了後の自分の処遇

 

です。

自分を一度「亡き者」にしてしまえば、その事実を知る人間も「亡き者」にしなければいけません

(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版7巻169ページ)

金田一少年は、遠野が生きている事実を知っている人間を生かして帰るわけにはいかないのに、美雪を手にかけなかったことを理由に、遠野は「捕まることを恐れていない」か、「目的を果たしたらしぬ気でいた」と言っています。

まさに、その通りでしょう。

頭の良い遠野ですから、急なプラン変更で自分を「コロす」ことにした時点で、ツアー参加者全員も一人残らず手にかけなければいけないことはわかっていたはずです。

しかし、美雪はかつての恋人、瑩子と瓜二つの容姿でした。

(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版7巻187ページ)

遠野と映る瑩子の写真を見て、金田一少年と美雪本人も自分と勘違いするほどに二人はソックリでした。

遠野が美雪にトドメを刺さなかったのは、瑩子と瓜二つの容姿だったからだと、いつき陽介は後に推測しています。

大怪我をした美雪については、放っておいてもいずれは命を落とすだろうと思っていたのかもしれませんが、そもそも美雪の怪我も遠野には想定外のことだったでしょう。
(森の中で美雪を一人にさせてしまった時に素で焦って探していたことから、自身が仕掛けた罠に美雪がかかることを本気で心配していたように見える)

(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版7巻177ページ)

また、ラストに涙を流す美雪の姿を見て酷く狼狽していた遠野を見ると、彼が直接美雪に手を下してコロせたかどうかは、正直微妙な所です。

そう考えると、金田一少年ならいざ知らず、遠野は最初から美雪をサツ害するつもりはなく(できないと悟っていた?)、橘川が来ていないで代わりに瑩子と瓜二つの美雪がツアーに参加し、プラン変更を余儀なくされた時点で、

 

「目的を果たした後に自分がしぬことも想定内にあった」

 

のではないでしょうか。

でなければ、橘川茂がいないとを知った時、躊躇なく自分を「亡き者」にしようとは思えません。

本来の遠野の計画では「ボートを使って逃げ延びること」だったでしょうが、想定外の出来事で簡単に自分を「コロす」計画に変更した経過を考えると、やはり「自分がしぬことを恐れていなかった」ように思えて仕方ありません。

まとめ

「悲恋湖伝説殺人事件」の犯人 ジェイソンの、復讐計画及び最終目的について、考察してみました。

「復讐相手が誰だかわからないから、とりあえず怪しい奴は全員やっちまおう☆」

というトンデモ理論で無差別に襲撃しまくった犯人でしたが、最初はあくまで、トリックを駆使してツアー参加者たちの恐怖心を煽りながら一人ずつ抹殺、復讐完了後はボートで逃亡する予定だったと推測できます。

が、ツアー参加者で標的の一人である橘川茂が不在、あろうことか実の妹ながら亡き恋人と瓜二つの容姿を持つ美雪がツアーに参加しているとわかった時に、犯人は自分にとって最悪の結末も予期していたのでしょう。

だからこそ、リスクも恐れずに入れ替えトリックで一度、この世から自分を「コロす」ことができたのです。

開発会社の御曹司という恵まれた立場でもありながら、躊躇いもなく自分を「コロした」犯人はこの時まだ高校3年生。

もっと他にやり方があったのではないかと思うと、なんだか切なくなります。

★事件のきっかけとなったオリエンタル号衝突事故については、こちらから。

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「悲恋湖伝説殺人事件」は、原作では金田一少年シリーズ第6話です。

犯人視点の「S・K」語録は、抱腹絶倒できます。

小説版では、犯人の復讐のきっかけとなった豪華客船沈没事故の、もうひとつの物語が描かれています。

 

1 Comment

とりすがり

もうずいぶん前に読んだから詳しくは覚えてないですが、閉じ込められた環境でじっくり穀すのは、一応反応を見たり問い詰めたりで本物の復讐相手を探る目的もあったんではないかなーと思ったりします。

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