【百人一首】現代風訳から作者紹介・覚え方まで! 1~5番歌

 

漫画「ちはやふる」や劇場版名探偵コナンの「から紅の恋歌」で注目を集めた小倉百人一首。

日本独特の文化でもある和歌は一見すると小難しいですが、意味がわかると覚えやすいですし、何よりも、1000年以上も前の日本人が三十一文字の中に様々な人間の気持ちを込めていたのかと思うと、とても面白いです。

では、小倉百人一首の歌を堅苦しくなく、頭に入りやすいように、意味を解説していきます。

 

1.天智天皇

【読み】

あきのたの かりほのいほの とまをあらみ
わがころもでは つゆにぬれつつ

 

百人一首トップバッターの詠み人は天智天皇です。

天皇が農民の立場でその苦労を詠んだ歌と言われています。

歌の意味

普通に訳すと、こうなります。

【現代語訳】

「実りの秋の取り入れにあたり、田の近くの仮小屋で寝ずの番をしていると、屋根をふいている苫の目が粗いので、隙間から漏れ落ちる夜露に、私の袖はしきりに濡れてしまいます」

 

これをわかりやすくすると、こうなります。

【わかりやすい現代風訳】

「小屋で寝ずの番するだけで袖が濡れてまうなんて、農民は大変やねんなぁ。俺よう知らんけどな!」

言葉の意味

【かりほのいほ】

仮に作った粗末な番小屋のこと。

田を荒らす鳥や獣を防ぐためのもの。

「かりほ」は「仮庵(かりいほ)」のことで、後ろの「庵」という言葉を重ねたのは、語調を整えるため。

【苫】

藁(わら)や萱(かや)で編んで作った莚(むしろ)。

屋根などをふくのに用いた。

【衣手】

着物の袖のこと。

古くは「衣」を「そ」と詠み、「衣(そ)の手」のあるところだから、袖を「ころもで」を言ったもの。

詠み人紹介

1番歌の詠み人は天智天皇でした。

日本の第38代天皇で、日本史を勉強していれば誰でも必ず聞くお名前ですね。

即位前は中大兄皇子(なかのおおえのおうじ)と称し、645年には中臣鎌足と手を結んで蘇我氏親子を討ち、天皇中心の新しい政治を始めました。

このことを、大化の改新と言います。(私は「むしこ(645)ろす大化の改新」と覚えました)

「大化」は日本で最初の元号です。

その後668年に即位して天智天皇となり、鎌足に藤原姓を与えたことでも有名です。

 

ちなみに、天智天皇は日本で初めての水時計(漏刻)を作ったと言われています。

この日が6月10日で、今の時の記念日となっています。

豆知識

実は、天智天皇本人が詠んだ和歌ではないとも言われています。

万葉集に収められている作者不明の農民の労働歌(民謡)がこの和歌によく似ていることから、後の世代で天皇が民を思って詠んだ歌として広めたとも考えられています。

覚え方

百人一首の覚え方は人それぞれですが、決まり字もあるので混乱しないようにしましょう。

【決まり字】

あきたの かりほのいほの とまをあらみ

わがころもで つゆにぬれつつ

【覚え方・語呂合わせ】

秋(生まれ) わが子つゆまみれ!

 

2.持統天皇

【読み】

はるすぎて なつきにけらし しろたへの
ころもほすてふ(ほすちょう) あまのかぐやま

 

詠み人は持統天皇

「いつの間にか夏なのね」と初夏の風景を詠んでいる歌です。

歌の意味

【現代語訳】

「春が過ぎて、いつの間にか夏が来たらしい。夏になると、白い衣を干すという天の香具山あたりに、あのように真っ白な衣が点々と干してあるわ」

 

【わかりやすい現代風訳】

「え、もう夏!? ……あ! 天の香具山に白い衣干してあったわ!」

言葉の意味

【夏来にけらし】

夏がやってきてしまったようだ、の意。

【白妙の】

衣・袖・たもと・紐・雪・雲など、白い物にかかる枕詞。

ここでは同時に、白い布の意味を表している。

【ほすてふ】

干すと世間の人が言う、の意。

「ほすてふ」は、「ほすといふ」の詰まった形。

【天の香具山】

現在の奈良県にある山。

畝傍山(うねびやま)・耳成山(みみなしやま)と共に、大和三山と呼ばれている。

詠み人紹介

2番歌の詠み人は持統天皇でした。

1番歌の天智天皇同様に、名前だけは聞いたことがある方も多いかもしれません。

日本の第41代天皇であり、更には日本で3人目の女性天皇でもあります。

 

1番歌の詠み人・天智天皇の皇女として生まれ、後の天武天皇となる大海人皇子と結婚しますが、続柄で言えば天武天皇は天智天皇の弟となるので、叔父と結婚したことになります。(当時は近親婚は当たり前に行われていました)

671年、父の天智天皇が亡くなり、その子・大友皇子が天皇になりましたが(実際には即位しなかったという説もあります)、672年、持統天皇の夫である大海人皇子が、壬申の乱で甥に当たる大友皇子を倒します。
(壬申の乱では、持統天皇も夫の大海人皇子に協力していたと言われています)

この翌年に大海人皇子は天武天皇となり、持統天皇も皇后として政治の上でも天皇を助けました。

夫の死後に即位した持統天皇は、吉野(現在の奈良県)をはじめ、各地を旅行して回るのが好きだったとも言われています。

豆知識

歌の中で詠まれている「衣」は、田植えの前に川で水を浴びておはらいをする女性たちが脱ぎ捨てたもの、とも言われています。

覚え方

【決まり字】

はるぎて なつきにけらし しろたへの

ころもすてふ あまのかぐやま

 

【覚え方・語呂合わせ】

ぎに 衣すよ天野く~ん!

 

3.柿本人麻呂

【読み】

あしびきの やまどりのおの しだりおの
ながながしよを ひとりかもねむ

 

3番歌の詠み人は柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)

「一人寝は寂しい」と恋しい女性を思って詠んだ歌です。

歌の意味

【現代語訳】

「山鳥の尾のように長い長い秋の夜を、私は恋しい人の訪れもなく、ただ一人寂しく寝なければならないのだろうか」

 

【わかりやすい現代語訳】

「一人で夜寝るの、めっちゃ嫌やわ~!」

言葉の意味

【あしびきの】

「山」にかかる枕詞。

【山鳥の尾の】

山鳥はキジ科の鳥。キジに似ている。

【しだり尾の】

長く垂れ下がった尾のように、の意。

【ひとりかも寝む】

たった一人で寝なければならないのだろうか、の意。

なんとも辛く、耐えがたいことだ、という気持ちを表している。

詠み人紹介

3番歌の詠み人は柿本人麻呂でした。

平安時代に藤原公任が選んだと言われている和歌の名人、三十六歌仙の一人で、「万葉集」時代で三十六歌仙に入っているのは、人麻呂を含め、4番歌の山部赤人、6番歌の大伴家持(中納言家持)の三人だけです。

(中納言家持は6番歌の詠み人です)

【百人一首】現代風訳から作者紹介・覚え方まで! 6~10番歌

 

柿本人麻呂は後に「歌の神様」と尊敬された有名な歌人で、2番歌の詠み人・持統天皇、その孫に当たる第42代文武天皇の時代に歌人として活躍していたことは確かですが、詳しい出自は今も不明です。

天皇をたたえる美しい歌を多数残しながら、恋歌も多く残しています。

豆知識

天智天皇の歌同様、これも柿本人麻呂本人が詠んだ和歌ではないとも言われています。

万葉集に作者不明でこれに類似する歌が収められているので、人麻呂の歌という確証がないのが現実です。

覚え方

【決まり字】

びきの やまどりのおの しだりおの

なががしよを ひとりかもねむ

 

【覚え方・語呂合わせ】

し なががおじさん!

 

4.山部赤人

【読み】

たごのうらに うちいでてみれば しろたへの
ふじのたかねに ゆきはふりつつ

 

4番歌の詠み人は山部赤人(やまべのあかひと)

駿河の国(現在の静岡県)を旅している時、富士山を見てその美しさに感動した時に詠んだ歌です。

歌の意味

【現代語訳】

「田子の浦の海岸に出てはるか彼方を見渡すと、富士の高嶺に真っ白な雪が降り積もっています」

 

【わかりやすい現代語訳】

「田子の浦なう☆ 富士山に雪が積もってるよ~」

言葉の意味

【田子の浦に】

静岡県富士郡の海岸のこと。

現在の田子の浦ではなく、倉沢・由比・蒲原・岩淵あたりの海岸。

【うち出でて見れば】

ずっと進み出て、はるかに眺めやると、の意。

【白妙の】

真っ白に、の意。

【富士の高嶺に】

富士山の高いみね、の意。

当時、富士山は煙が出ていて、夏も冬も雪のある山として知られていた。

詠み人紹介

4番歌の詠み人は山部赤人でした。

3番歌で紹介した柿本人麻呂同様に三十六歌仙の一人で、柿本人麻呂と共に歌聖と呼ばれて讃えられています。

自然を詠んだ歌に優れたものが多いです。

 

山部赤人は、第45代聖武天皇に仕えていたとされる、下級官人でした。
(聖武天皇は、1番歌の詠み人天智天皇の玄孫で、2番歌の詠み人・持統天皇のひ孫に当たります)

持統天皇の時代に活躍した柿本人麻呂の方が、山部赤人よりも少し先輩になるわけですね。

山部赤人も、下級官人とはいえ優れた宮廷歌人として行幸に随行し、天皇に関するたくさんの歌を残しています。

豆知識

万葉集の代表撰者と言われる大伴家持は、山部赤人と柿本人麻呂の二人の頭文字をとって「山柿(さんし)」と呼び、大変尊敬していたと言われています。

覚え方

【決まり字】

のうらに うちいでてみれば しろたへの

のたかねに ゆきはふりつつ

 

【覚え方・語呂合わせ】

 

5.猿丸大夫

【読み】

おくやまに もみぢふみわけ なくしかの
こえきくときぞ あきはかなしき

 

5番歌の詠み人は猿丸大夫(さるまるたゆう)

鹿の声を聞いて秋の寂しさを詠んだ歌です。

歌の意味

【現代語訳】

「奥深い山の中で降り積もった紅葉を踏み分けながら鳴いている鹿の声を聞くと、秋はひとしお悲しい思いがすることだ」

 

【わかりやすい現代語訳】

「紅葉が凄いことになっとるで~鹿も鳴いとるで~。冬が来る前の秋って寂しいなぁ」

言葉の意味

【奥山に】

人里から遠く離れた奥深い山で、の意。

【鳴く鹿の】

雌を求めて鳴く雄の鹿。

「紅葉に鹿」「鹿は秋」という取り合わせは、この歌から始まった。

【秋は悲しき】

秋は悲しい思いがすることだ、の意。

詠み人紹介

5番歌の詠み人は猿丸大夫でした。

3番歌詠み人・柿本人麻呂、4番歌詠み人・山部赤人と同じく、平安時代の和歌の名人三十六歌仙の一人です。

しかし、この猿丸大夫という人物は謎が多く、本当に実在したかもわからないのです。

 

そもそもこの歌も、9世紀末に第58代光孝天皇の皇子・是貞親王(これさだしんのう)が開いた歌合せの時のもので、詠み人知らずとして古今和歌集に残されていますが、本当に猿丸大夫の詠んだ歌かは不明で、しかし百人一首では猿丸太夫の歌として選出されています。

豆知識

猿丸大夫の「大夫」の読みは「たいふ」が本来正しいものですが、現在は「たゆう」と呼んでいます。

覚え方

【決まり字】

やまに もみぢふみわけ なくしかの

きくときぞ あきはかなしき

 

【覚え方・語呂合わせ】

で こが…!?

 

 

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