【金田一少年の事件簿】「オペラ座館殺人事件」月島冬子の人間関係を探れ! 七瀬美雪とは親しくなかったのか?

 

今や推理漫画の代表作とも言える作品、「金田一少年の事件簿」シリーズ。

私も子供の時から大好きで、最初に単行本を集め出したのがまだ小学生の頃……あれから20年以上経ち、新たに「金田一37歳の事件簿」の単行本も発売しているので、これを記念?して、最初から金田一シリーズを読み返すことにしました。

当時は大して疑問に思わなかったことも、大人になって読んでいると、色々と思う所がたくさん出てきたので、ひとつずつ考察していきます。

第一回目の考察は、シリーズ第一作目の「オペラ座館殺人事件」から、演劇部員の月島冬子の人間関係について考えていきます。

 

*以下、壮大なネタバレが含まれるので、未読の方は要注意*

 

月島冬子のプロフィール

(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版1巻87ページ)

月島冬子は、私立不動高校2年生で演劇部に所属。

他部員のほとんどが認めるほど演劇の才能があり、他の部員に秘密で同じ演劇部員の有森裕二と交際していたが、顔に硫酸をかぶって大怪我をしてしまったことで、入院先の病院の屋上から飛び降りて自ら命を絶つ――。

月島冬子と言えば、ネタバレを全て含んで紹介するならばこんな感じのプロフィールです。

漫画では既に亡くなってしまった後なので、生前の描写が一切ない残念な方ですが(登場するのは回想シーンのみ)、観る者を惹きつける演劇の才能を持ち、全国高校演劇コンクールを控えた不動高校の演目である「オペラ座の怪人」のヒロイン役にも抜擢されるほどの人物でした。

 

そんな月島冬子ですが、どんな性格で、果たして演劇部内での人間関係はどんなものだったのでしょう?

同じ学年の七瀬美雪とは親しくなかったのか?

そもそも、どうして有森裕二との交際を隠していたのか?

 

意外と、謎がありまくる女性なのです。

★月島の復讐のため、有森が行った下準備の考察記事は、こちらから。

【金田一少年の事件簿】「オペラ座館殺人事件」犯人 歌月の犯行までの下準備を暴いてみた

月島冬子はどんな人物だったのか?

漫画からでは、月島冬子の性格を直接表現するような描写は多くないです。(あってもそれは有森の証言なので、今回は参考にせず)

ただ少なくとも、自分の顔に硫酸をかぶらされたきっかけを作った3人(早乙女涼子・桐生春美・日高織絵)に対して、許そうという気持ちを持つほど心の優しい人物だったことがわかります。

唯一、恋人であった有森だけは事故?の真相を知っていましたが、月島冬子は彼以外の人間には上記の3人のことは誰にも言わずにいました。

 

それだけでも、かなり懐の深い性格……。

 

確かに、硫酸を顔にかぶってしまったことだけを見れば単なる事故かもしれませんが、

「ちょっと怪我しちゃった☆ テヘペロリン☆」

レベルではない、これから演劇を続けていられないを通り越し、日常生活にも支障が出るかもしれないレベルの大怪我を顔に負わされたというのに、その事故の大きなきっかけを作った3人の名前を、誰にも告発しないなんて……。

そりゃあね、3人は故意ではなかったと言い張るでしょうから罪に問えるかと言ったら厳しいでしょうし、実際に剣持警部も生き残った早乙女涼子に対しては事情聴取だけで終わらせているので、告発しても無駄だったのかもしれませんが、

 

「事故のきっかけの真実を言わない」

 

というだけで、月島さん高校生ながら凄い人です。

まさにです。

そんな心優しい人物でしたが、

「よかったぁ! 月島さんあたしたちのこと誰にも言ってないのね!?」
「ラッキーだったじゃないの」

「ほら! あたしの言った通りでしょ?

 あの子あくまでいい子ぶる気なんだから、おかげでこっちは助かっちゃったけど~!

 

「金田一少年の事件簿」単行本版2巻19ページより引用

なんていう、3人の心無いを通り越した反省もクソもないゲス会話を偶然聞いてしまったことで、火傷を負った顔だけでなく、心までもが人を憎むという醜さに蝕まれる前に、有森への遺書を書いてから翌日に自ら命を絶ちます。(遺書は有森に読まれることはありませんでしたが…)

 

めちゃくちゃええ子やん、冬子……(泣)

 

ええ子過ぎて自ら命を絶つ道を選択してしまったことが、非常に悲しいです。
私がこの子の親なら絶望します。

月島冬子の演劇部内での人間関係

さて、では月島冬子の演劇部内での人間関係です。

月島冬子は2年生、同じ2年生の女子はというと、七瀬美雪と、月島が硫酸をかぶった事故のきっかけを作った日高織絵、同じく桐生春美がいます。

(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版1巻24ページ)

(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版1巻27ページ)

上が日高(πでかい)、下が桐生(眼鏡外すと美人)です。

月島に主役を取られて嫉妬していた日高、桐生は、彼女に好印象を持っていなかったでしょう。

おそらく、良いライバル関係にもなっていなかったのではないでしょうか。

でなければ、硫酸で脅かしてやろうなんて発想浮かびませんし、加担することもありません。

同じ2年生の男子は、隠れて交際している有森裕二、神矢修一郎、仙道豊

(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版1巻46ページ)

(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版1巻38ページ)

上が神矢(アニメでモブキャラを打ち破ったモブキャラ)、下が仙道(真性モブキャラ)です。

神矢と仙道に関しては、こっそり月島に憧れもしくは好意を持っていたように感じられる描写があります。

が、月島は有森と交際して遺書まで宛てる間柄なので、彼らに部員以上の好意の目を向けることはなかったと思われます。

3年は布施光彦と、早乙女涼子

(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版1巻18ページ)

(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版1巻148ページ)

上が布施(仮性モブキャラ)、下が早乙女(嫁イビリする姑役が最適任)です。

月島にとって先輩にあたる布施との関係は不明ですが、同じ先輩になる早乙女に関しては日高、桐生と同様。

むしろ、早乙女は日高や桐生以上に月島に対して反省のカケラが見えない発言をしているだけに、生前の月島に対しては嫉妬の業火に焼き尽くされていたことでしょう。

そんな人間と、月島も心底親しくできるはずありません。

わかりやすく彼らの人間関係を図にすると、こんな感じです。

月島関係原作 (1)

それでなくても少ない部員なのに、既に女子部員だけでも和気あいあいという雰囲気ではなさそうです。

正直入部したくありません。

 

★「学園七不思議殺人事件」で登場する、同じ不動高校のミステリー研究会の部員たちは皆、個性派です。

【金田一少年の事件簿】「学園七不思議殺人事件」揃いも揃って全員個性が強すぎる、不動高校ミステリー研究会の部員たち

月島冬子と七瀬美雪は親しかったのか?

ここで純粋な疑問です。

自分を陥れた人間を許そうとするほど心優しい月島冬子、そして我が金田一シリーズのヒロイン七瀬美雪

(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版1巻32ページ)

この二人、親しくなかったのでしょうか?

同学年、同部活、双方性格も良いならば仲良くなっていても何ら違和感はないのですが、

 

仲が良かったという描写が一切ない

 

のです。

美雪は月島のことを「月島さん」と呼んでいるし、演劇部のみんなで行った月島のお見舞いにも、美雪は行けていません。

本当に仲が良ければ、よほどの用事でない限りお見舞いを優先するはずです。

金田一に月島のことを説明していた際も、何やら第三者的な説明で、ほとんど感情的になっていませんでした。

むしろ、美雪はどちらかと言えば日高織絵の方が仲が良い雰囲気でした。

お互いに「織絵ちゃん」「美雪ちゃん」と名前で呼び合い、合宿一日目に様子のおかしかった日高の様子を美雪は心配し、彼女の変わり果てた姿を発見した時はショックで気絶、涙も流していました。

美雪は舞台に立つ女優ではなく裏方の人間なので、月島と親しくなかったのか?

――否、美雪と仲が良いらしい日高は役を貰っている表舞台の人間なので、

「美雪が裏方だから月島と親しくない」

という説は当てはまりません。

と、いうことで考えられるのが、

 

  • 月島冬子は演劇部内では親しい友人がいなかった
  • 月島冬子が演劇部内で親しくしていた友人は、既に退部してしまった

 

の、どちらかです。

個人的には、決して悪人ではなかったと考えられる月島のことなので、後者ではないかと推測しています。

月島冬子と親しかった人物

月島冬子の死が原因で、コンクール前だというのに3人の退部者を出してしまった演劇部。

 

この3人の内誰か、もしくは全員が、月島と親しかった

 

のではないでしょうか。

(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版1巻52ページ)

演劇部員で月島のお見舞いに行く描写では、事件の時にいない部員が右端にいます。

おそらく、彼女が退部した演劇部員です。

親しい友人が目の前で命を絶てば、ショックで退部してしまうのも無理ありません。

つまり、

 

月島は美雪の他に親しい友人がおり、グループで固まって行動していた

 

ので、日高と仲の良い美雪とは同じ部員同士の交流はあっても、深く親しくならなかったのではないか、と考えられます。

なので、改めて不動高校演劇部の人間関係を図にすると、

月島関係プラス

名もなき元劇団部員さんも追加されて、こんな感じになりました。

それでもやっぱり入部したくありません。

誰も知らなかった月島冬子の〇〇

不動高校演劇部のヒロイン役だった月島冬子と、ヒロインの恋人役兼裏方小道具係の有森裕二

(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版1巻168ページ)

この二人が隠れて交際していたことは、誰も知りませんでした。

 

なぜ二人は、交際していることを隠していたのでしょうか?

 

有森が月島との交際を隠していた理由を言わずに亡くなってしまったので、この点は意外にも最大の謎です。

高校生同士の恋愛ならば、わざわざ周囲に隠さずとも支障はないかと思いますが…。

考えられる理由としてまず単純に有り得るのは、

 

「恥ずかしいから」

 

青春真っ最中の10代後半の高校生、お互いに初めての男女交際だったなら、そんなウブで可愛い感情が芽生えたとしてもおかしくありません。(まさにアオハル~!)

特に疚しい気持ちはなく、10代にあるあるの純粋な気持ちからくる発想で、周囲に交際を隠していた可能性はあります。

そしてもうひとつ考えられるのが、

 

「月島冬子の生まれ持ったスター性」

 

(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版1巻50ページ)

舞台に立つだけで観る者を惹きつけてしまうその類稀な才能は、恋人だった有森も特に強く感じ取っていたことでしょう。

同時に、月島の才能を妬む視線にも敏感に感じ取っていたのではないでしょうか。

月島本人も、自分のことを良く思っていない人物のことくらいはわかっていたかもしれません。

女の世界は怖い

です。

演劇の才能があるだけで妬まれているのに、そこで部員間で恋愛までしていると知られたら、また無駄に妬まれて反感を買うだけかもしれません。

それを避けるために、親しい友人にも打ち明けずにいたのかもしれません。

これら2つの仮説、正直漫画での描写だけでは推測の域を出ませんが、個人的には、可能性として濃厚だと感じています。

まとめ

舞台に立てば観客を惹きつける素晴らしい演技をする月島冬子も、普段の演劇部内での人間関係は、決して華やかではありませんでした。

隠れて交際している有森裕二と、漫画では既に退部した数人の友人以外とは、金田一シリーズのヒロイン七瀬美雪も含めて、さほど親しくなかったのではないかと考えられます。

それでも、類稀な演劇の才能を持ち、舞台に一度立てば観客を魅了していた月島冬子。

同じ部員の醜い嫉妬をきっかけに(心が醜くなる前にとはいえ)自ら命を絶ってしまい、更に悲しいすれ違いで恋人の有森を犯罪者にしてしまい、本当に残念で仕方ない、不憫な女子高生でした。

★恋人だった有森が、月島の復讐を果たすために行った下準備の考察記事は、こちらからどうぞ。

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★オペラ座館殺人事件に関わった、ホテルオーナー黒沢和馬氏の人生については、こちらからどうぞ。

【金田一少年の事件簿】「オペラ座館殺人事件」三部作の関係者、黒沢和馬の不運過ぎる人生を辿ってみた

★月島冬子の同級生だった時田若葉についての考察記事は、こちらからどうぞ。

【金田一少年の事件簿】「異人館村殺人事件」時田若葉と兜霧子は親しかった? 二人の関係から垣間見える、若葉の涙の意味とは?

 

記念すべき金田一シリーズ第1巻も、今は文庫版です。

有森くん視点の事件簿。完全にギャグ漫画です。

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