【金田一少年の事件簿】「金田一少年の殺人」犯人、見えざる敵が見えざる敵になった理由

 

金田一少年の事件簿の「金田一少年の殺人」で、犯人「見えざる敵」が犯罪者になった理由について考察します。

 

*以下、最初から最後まで「金田一少年の殺人」や他過去のお話の事件のネタバレ(犯人等)が全開なので、未読の方は要注意*

 

犯人「見えざる敵」とは

(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版12巻184ページ)

正体は、都築哲雄。

最初の犯行は計画的ではなく、被害者の一言で逆上してしまった末の突発的な犯行でした。

しかし、突発的とはいえその罪を何の関係のない金田一少年になすりつけ、結果的に五人もの人間を手にかけます。

しかも、犯行の三人目以降は明らかにサツ意を持って犯行に及びました

妻に先立たれ、移植が必要なほどの重度の腎障害である一人娘を男手ひとつで育てていた都築は、娘の移植をエサに悪徳医師による臓器の密輸に仕方なく協力しており、その事実をノンフィクション作家の橘五柳が実名入りで本にしようとしたことが、事件の始まりです。

本の出版を思いとどまらせようと橘の所へ通っていた都築でしたが、橘のある「一言」で頭に血が上り、咄嗟に鈍器で殴ってしまったのです。
(こういった事件では、いつも都合よく手近に手頃な鈍器がある不思議…)

罪のない人物を次々と手にかけたのは全く同情の余地はなく、子どもの頃は「同情できない犯人の一人だなぁ」という印象だったのですが、大人になるとその印象がガラリと変わって自分でも驚きでしたね。

もちろん犯した罪は大罪なのですが、娘との回想シーンは都築の後悔や憤りには心底共感してしまいました。

犯人の犯行スタイル

今回の犯人「見えざる敵」の最初の犯行は、突発的なものでした。

娘の病気を治したいがために悪徳医者に言われるがまま臓器の密輸に手を染めてしまっていた都築は、その事実を掴んだノンフィクション作家の橘五柳に罵られたことで、頭に血が上ってしまい鈍器で殴ってしまいます。

(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版14巻23ページ)

私利私欲のためではなく、あくまで娘の病気を治したい一心で非人道的行為だとわかっていながら悪徳医者に協力してしまった都築としては、橘のこの言葉はかなり刺さったでしょう。(そもそも、最初に娘の病気が完治しなかったのは手術をした病院側のミス…)

この後、無関係の金田一少年に罪を被せる行為を繰り返しながら、都築は更に犯行を重ねます。

次の被害者、大村紺の自宅では、橘が残した新作の原稿の在りかを示す暗号が人から人へと伝わり最後に原稿の在りかを知る者に辿り着く――と勘違いした都築は、自分以外の人間が伝言を辿るのを阻止するため、大村の自宅にあったであろうゴルフクラブで彼を撲サツ。

(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版12巻186ページ)

わざわざ目立つゴルフクラブを持参して犯行に及ぶとは考えられず、犯行後も手ぶらでいることから、大村サツ害の凶器であるゴルフクラブは大村の自宅にあったものだと考えられます。

つまり、最初の犯行である橘は完全に突発的犯行、そして二番目の被害者大村も、おそらく最初は手にかける予定はなく、大村と金田一少年の電話のやり取りを聞いて橘の残した伝言の意味を勘違いした結果、その場で予定変更としたのでしょう。

頭の切り替えが非常に早いです。

★「学園七不思議殺人事件」犯人も、二度目以降の犯行からの切り替えの早さには定評があります。

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そして三人目以降は、橘の伝言を知る者を確実に葬り去るため、毎回ナイフのような凶器を持参して犯行に及ぶようになりました。

とうとう、完全にヤる気マンマンの計画犯罪者になったのです。

(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版13巻19ページ)

三人目の被害者である時任亘は直接手を下していませんが、鉄材をまとめていたロープを持参のナイフで故意に切断して、間接的に手を下しました。

四人目の犠牲者である桂横平と、最後に犠牲になった野中ともみに至っても、何の落ち度のない被害者だけに都築の非情さが窺えます。

決して悪人ではなかった犯人

都築が罪なき人間を五人も手にかけたことは覆しようのない事実ですが、彼のその心根は決して悪人ではありませんでした。

それは、この事件で意外にも人望があることがわかったいつき陽介氏の言葉からも伝わってきます。

(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版14巻40ページ)

野中さんのような自分に協力してくれたジャーナリスト仲間をサツ害されたり、信頼する金田一少年が罪を着せられようとなっても、それでもいつきさんは都築を信じています。

都築の人間性をよく知っていなければ、金田一少年相手にここまで言えません。

しかもいつきさんは、以降都築の一人娘である瑞穂ちゃんを引き取って養育しています。

親戚でもないのに、単なる仕事仲間である人間の娘(しかもまだ小学生)を育てるなんて決して容易ではありません。

 

それだけいつきさんは、都築を尊敬して、信頼もしていたのではないでしょうか。

 

(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版13巻154ページ)

原作では皆さん驚いているだけですが、アニメでは針生さんや鴨下さんまで、「俺には信じられない」など、都築が犯人であることが心底意外のようでした。

いつきさん以外のジャーナリスト仲間も、都築が犯罪に手を染めていたとは思えないほどの人物だったのです。

(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版14巻30ページ)

また、「2つの罪の意識」に苛まれてきたと言う都築が死の間際に漏らしたのは、先立たれた妻のことと、重病に侵された娘のことでした。

もしかしたら、亡くなった妻はまだ幼い娘の瑞穂が一人で看取ったのかもしれません。

更に、妻のいない寂しさを仕事に打ち込むことによって、今度は娘の病気にすら気付けなかったと自分を責めていた都築は、娘に自分の腎臓を移植させるために自ら命を絶ちますが、今わの際の言葉は、家族のこと、そして金田一少年への謝罪でした。

被害者たちのことを考えると完全に同情できないですが、このワンシーンだけは大人になるとチラリとページを覗き見るだけで泣けます。

犯人が「見えざる敵」になった理由

また、都築が橘の原稿をそこまでして阻止したかった理由は、自分の罪が暴かれるのを阻止するためではなく、娘の瑞穂を思ってのことだったなのでは…、と思わせられます。

 

罪が暴かれれば、難病の娘に臓器移植できなくなる恐れがある

 

からです。

(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版14巻30ページ)

単純に自分の罪を隠したかっただけなら、最期に自ら命を絶って自分の腎臓を娘に移植してくれ、なんて言えません。
(「学園七不思議殺人事件」の犯人の動機はまさに「過去の自分の罪を隠すため」でしたが、被害者遺族に刺された時は最期まで「しにたくない」と涙を流していました)

「最初からこうしておけば…」

という都築の発言や、過去に理不尽に無差別サツ人事件に巻き込まれた経験もあるいつきさんの都築を庇う発言も鑑みると、都築が「見えざる敵」になったのは、自分のためではなく、

 

一人娘の難病を治したい

 

という願いが根底にあっての犯行だったように感じます。

五人もの命を奪っておいて刑に服することなく命を絶つのは卑怯、というご意見も当然その通りで、まさに超利己的な発想ではありますが、子どものために非情な犯罪者になってしまったその姿は、親としてほんの少しだけ共感できてしまう部分がありますね…。

★いつきさん初登場の「悲恋湖伝説殺人事件」犯人も、内情は違いますが大切な人以外の命はどうでもいいと考えました。

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★子を思う親の愛が獣へと変貌させたのは、「飛騨からくり屋敷殺人事件」犯人にも共通しています。

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意外としんどい犯行スケジュール

今回の事件は当初は計画性はなく突発的なものだったので、現場からの脱出トリックはその場での閃きでした。

犯行直後に金田一少年がやって来てしまい、現場である離れから本館まで、金田一少年の足跡しか残っていないぬかるみをどう攻略するか?

都築は耳の遠いおばあさんを利用してドアとをドアを繋ぎ、ぬかるみに自分の足跡をつけずに脱出しましたが、

船津紳平/さとうふみや/金成陽三郎/天樹征丸、講談社「犯人たちの事件簿」3巻16ページ)

御年52歳の都築のおじさんには、身体を使うトリックはある意味、命がけです。

テレビ局のプロデューサーという立場で、定期的に娘の通院も担い普段は多忙だったであろう都築が、日常的にガッツリ鍛えていたとは考えられません。

更に、ドアを使って本館まで渡り、どこかしら痛めていたとしても不思議ではない体力勝負のトリック後は、暗号を追わなければいけないという苛酷スケジュールです。

 

事件翌日には軽井沢から東京に舞い戻り、

夕方5時頃に北区にある大村の自宅で予定外にゴルフクラブでポカリ、

更に翌日は時任が勤める千代田区神保町で犯行に及び、

金田一少年を追跡しながら警察から彼を匿い、

おそらく都内で桂をも手にかけた後は、

再び軽井沢に向かって野中をも脅迫の末にナイフでズブリ、

夜中に橘の別荘に忍び込みます。

 

……。

 

この間、まともに仕事できなくない?

 

年を重ねると多少の無理もきかなくなるものですが、この約一週間の間、都築は体力的にも相当キツかったでしょうね。

人の命を奪うという慣れない行為も重なり、有給でも取っていたと考えないと到底乗り切れません。

★「オペラ座館殺人事件」犯人も、過密スケジュールでのトリックでした。

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家庭内では、妻を亡くしてからは父一人子一人の生活が続いていたせいか、

(さとうふみや/金成陽三郎、講談社「金田一少年の事件簿」単行本版13巻40ページ)

10歳になっているはずの娘の幼稚園時代らしき制服が壁にかけっぱなしだったり、リビング?も少々散らかっていたりもしますが、仕事面ではいつきさんも信頼している辺り、とても優秀な方だったのでしょう。

事件の後半は金田一少年を利用しての綿密に計画された犯行ではない割に、とても手際の良い犯人でした。

まとめ

「金田一少年の殺人」で、犯人「見えざる敵」が犯罪者になった理由について、考察してみました。

最初は完全に突発的な犯行だったものの、途中から完全にサツ意を持って過密スケジュールな犯行を重ね続けた犯人に同情の余地はないですが、その本当の動機は娘の難病を治したいという一心からきたものだったように感じました。

大人になって読み返してみると、また違った視点を発見できるものですね。

ポケベルやフロッピーディスクなど、現在はほぼ見かけない当時の道具が重要な役割を持っていたのも、懐かしい気持ちにさせてくれます。

ここからは、「たられば」の話になってしまいますが…。

橘の誕生日パーティーで暗号文が発表された時、金田一少年がすぐにいつきさんたちに暗号文の謎を教えてあげていれば、少なくとも金田一少年は殺人の罪を着せられることはなく、瑞穂が不幸になっている可能性はありますが、罪なき人間が命を奪われることもなかったのでは…と勘繰ってしまいました(笑)

 

「金田一少年の殺人」は、金田一少年シリーズ第10話です。

原作はシリアスなので、犯人視点のギャグ漫画ではつい笑ってしまいます。

 

 

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